第3回 「プライズ運営」について語る(前編)

高田馬場ゲーセンミカドの店長、イケダミノロックです!

今まであんまり語られることのなかった「ゲームセンターのお仕事」。個人経営ゲームセンターの裏側で何が行なわれているのか? お店によってもだいぶちがうと思いますが、ここでは僕の経験を赤裸々に語りたいと思います!

第3回目は「プライズ運営」についてです!

 

「プライズ」ってなんですか?

皆さんは「プライズゲーム機」というものがなんだかわかりますか? まず「プライズ」とはなんぞや、という部分について説明します!!  “PRIZE”という単語の訳をエキサイト辞書で見てみると、

・(競争などで勝利者に与えられる)賞
・ほうび
・賞品
・賞金
・(学校で善行・優秀な成績などに与えられる)賞
・優等賞
・(くじなどの)景品
・懸賞(金)
・努力して手に入れる(に値する)もの
・貴重なもの

などとなります。この「プライズ」をシステムに組み入れたのが「プライズゲーム機」、つまり「努力して景品をもらえるゲーム機」という意味で、皆さんもご存知、SEGAさんの「UFOキャッチャー」を代表とする、クレーンゲーム機など景品がもらえるゲーム機全般を指します。

クレーンゲーム機は単純明快かつ、上手に遊べば手もとに残る「景品」を持ち帰ることができるので、老若男女、世代を超えて遊べるゲーム機として人気があります。なかでも「UFOキャッチャーDX2」は爆発的にヒットし、以後「プライズ」というジャンルがゲームセンターで確固たる地位を獲得しました。

「UFOキャッチャー」がヒットした要因は従来のプライズゲーム機が比較的小さい景品(飴玉とかクッピーラムネとか)しか扱えなかったことに対し、大きいフィールド(ステーションとも呼ぶ)と大き目のアーム(爪がついてるハンドの部分)が装着され「ぬいぐるみ」「日用品雑貨」といった大きな景品を取り扱えるようになった点。そして、メーカーさんがさまざまなキャラクターの版権を利用して「キャラクター商品」(アンパンマンとかディズニーとか)をゲームセンター向けにリリースし始め、景品自体の品質が向上したことにあるとされています。

なお、2014年現在、ゲームセンターを管轄する「公安委員会」において、本来ゲームセンター(風俗営業8号店)は風俗営業法第23条第2項により

「遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない」

という取り決めがなされています。ただし、特例事項第3項として

「遊技の結果が物品により表示される遊技の用に供するクレーン式遊技機等の遊技設備により客に遊技をさせる営業を営むものは、その営業に関し、クレーンで釣り上げる等した物品で小売価格が概ね800円以下のものを提供する場合については第23条第2項に規定する遊技の結果に応じて賞品を提供することには当たらない」

とされており、以上の理由からゲームセンターのUFOキャッチャーなどに使用されている景品は仕入れ単価が800円以下のものまでなら使用することができます。

ここまでが概要説明で以下、少し昔話を……。

 

プライズゲーム機、その繁栄と衰退

僕自身が就職しはじめた時代のゲームセンターは前述の「UFOキャッチャーDX2」や「NEW UFOキャッチャー」が稼働しはじめた売上全盛期でした(この全盛期は1987年~1995年くらいまでと僕は考えています)。

出勤朝一番にバンプレストさんがリリースした景品、だいたい1カートン60個~100個入り税込み約30,000円(※)で販売されていた「ルパン三世のフィギュア」とか「ウルトラマンのぬいぐるみ」などを、UFOキャッチャーのステーションにぶっこんで、閉店前に筐体内キャッシュボックスを開けてみれば1日で100,000円ぶんぐらいの100円玉がギッシリかつ、ステーション内の景品はすでに空っぽ。また朝一番でステーションに景品を補充する……というかなり大味な(笑)運営を実行していました。
※……当時のゲームセンターが使用してもよかった景品単価は、現在より300円ほど安い「500円以下」という取り決めでした。

【第3回】プライズ前編

(イラスト・菊野郎)

前述の「ルパン三世のフィギュア」は僕がいたとあるお店ではとくに人気で、当時3カートンから5カートンは購入していた記憶があります。これが全盛期の「プライズ運営」となります(笑)。

もちろん、こんなバブリーな状態が長くつづくわけもなく、いつしかUFOキャッチャーのインカムに徐々にかげりが見え始めます。理由は簡単です。当時はゲームセンター全盛期ということもあり、ゲームセンターの出店がとても多く(UFOキャッチャー専門店なんかもオープンし始めました)、それにともないUFOキャッチャーの出荷台数も加速度的に増えている状況。そんななかで、どこのお店も「同じ景品」で「同じ全盛期運営」(笑)をしているため、完全に景品が供給過多となり、インカム割れ(収入の低減化)を起こしてきたのです。

さらには、インカム割れに起因する「景品原価率オーバー」「景品の不良在庫化」を懸念した多くの店舗が右へならえでUFOキャッチャーの設定を厳しく(景品を取りにくい設定に)してしまい、お客さんがそれに気がつきはじめたことが挙げられます。そうです、この頃の多くのお客様はクレーンゲーム機にアームの設定があることなんて知らなかったんです。

ここから、ゲームセンターの「プライズ運営」の洗練化がはじまります。

 

プライズ運営の生命線は景品原価率にあり

ゲームセンターで最初に「プライズ運営」を従業員に対しマニュアル化したのは、シグマという会社が運営していた「ゲームファンタジア」系列店舗と言われています。そのなかでの最重要項目は以下となります。

「景品原価率について」

まず、この景品原価率について説明します。景品原価率とは「仕入れ÷インカム×100」で算出できる数字となります。たとえば1カートン30,000円で仕入れた景品がすべて取りきられるとか、人気がないので景品入替になるとしましょう。そこまでに稼いだUFOキャッチャーのインカムを仮に75,000円として計算すると

30,000(仕入れ)÷75,000(インカム)×100 = 40

つまりその景品1品目に対する景品原価率は40%となります。これはお店が稼いだ売上の4割をお客様に景品(物品)として還元したという意味になります。

では

30,000(仕入れ)÷25,000(インカム)×100

だとどうでしょう? この場合は景品原価率120%……つまり2割の赤字ということです。景品の取られすぎか、それともあまりにも人気がないか……要因は状況によりことなりますが、これはマズイです(涙)。

「景品原価率〇〇%を死守せよ!」

大手某メーカーさんのゲームセンター店舗は月間景品原価率を「おおむね30%で運営せよ!」という指示が出ていると聞きます。つまりこれはお客様に3割を還元する……もうちょっと現実的な言い方をすると、1個800円の景品を1プレイ100円のUFOキャッチャーで使用した場合、24回分(2,400円)で1個出すようにする、という意味になります。

2,400円に1個……。3割を還元しているのに、こうやって数字で説明してしまうと受け取る側もなんだか還元されている気がしませんね(笑)。

一時期ヒットした「ファンシーリフター」や「ブブトンアタック」に代表される完全確率機という機種ならばチョイチョイとテスト画面で設定するだけなので管理はラクなのですが(この手の機械はすぐお客様にバレて終了しました)、アナログなクレーンプライズ機において、毎回24回目で確実に景品を取れるように設定することはほぼ不可能と言えます(え!? 最近のクレーン機はそれも可能らしいぞ!?)。

なので、プライズ運営が下手な店舗はとりあえず景品を入荷したらまったく景品が取れない設定(ひどい!)でひとまず運営を開始し、おおむね景品原価率30%くらいのインカムを稼いだのを確認したら景品を取りやすく設定し直す……というとても大味な運営を2014年現在も行なっています(けしからん)。

「景品原価率はお店全体で調整するのだ!!」

それなりの規模のお店ですと前述のように、お店のすべてのUFOキャッチャーを景品入替のたびに景品原価率30%フラットで運営することはむずかしいですし、景品原価率30%ってことはインカムを投じた7割のお客様は景品をゲットすることができないわけで、なんとなくインチキくさい印象を与えかねません。

そこで仕事のできるゲーセン店員は標題のとおり、景品仕入れの段階で、

・取らせる台
・勝負ネタ台

と、目利きと頭脳をフル回転させているのです! たとえばUFOキャッチャーがA、B、Cとお店に3台あると仮定します。だいたいUFOキャッチャーは1台に2ステーションあるのが一般的ですので、以下のように景品を投入し景品原価率を設定するものとします。

UFO
キャッチャー
種類
景品内容
(1台2種)
景品原価率
A チロルチョコ/うまい棒 70%
B ONE PIECE景品/ガンダム景品
(フィギュアものなど)
30%
C  妖怪ウォッチ景品1/妖怪ウォッチ景品2
(ぬいぐるみものなど)
5%

 

Aを取らせる台と設定し、Bはまぁ普通に運営、いま流行のCの妖怪ウォッチはお客さんが多いので勝負ネタとして設定してみました。かなり大味かつ露骨な例で恐縮ですが、いまだに元気なプライズメインの店舗はこのように取らせる台は取らせて、勝負ネタではガッツリ稼ぐという運営、循環を毎日のように動向を見ながら実施しているのです。

……これってじつはビデオゲームのインカムの話と共通点があって、インカム効率の高い「格闘ゲーム」ばかりのラインナップではなく、インカム効率は落ちるが少し骨休めに遊べたり、お店全体の品揃えやお店の色を強調するために「レトロゲーム」、「パズルゲーム」、「シューティングゲーム」などを設置する……といった考え方に非常に近いんですよね。

というわけで、書いてるとヤヴァイぐらいに話が長くなるので、プライズ運営については、もっと具体的な例やプライズの現状を紹介する後編につづきます(笑)!

なお、今回と次回の原稿を執筆するにあたり、僕が以前在籍していたGM商事という会社のもと上司であり、現在は独立してアミューズメント、ゲームセンター向けの景品販売を実施している会社「株式会社レインボー」代表・豊田社長にご協力いただきました。ありがとうございます。

(文・イケダミノロック)

【イラストレーター紹介】

菊野郎 いろんなところでゲームのコミカライズや4コマ等漫画などを連載中。連載、単行本の情報はサイトにて。おしごとください。

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菊屋敷

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著者プロフィール

イケダミノロックゲームセンター店長
株式会社INH代表取締役、高田馬場ゲーセンミカド店長。一応プロのギタリストです。ゲームとかパチンコの曲を録音させてもらったり、ゲームミュージックの公式バンドもやってます。

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