第4回 「プライズ運営」について語る(後編)
高田馬場ゲーセンミカドの店長、イケダミノロックです!
今まであんまり語られることのなかった「ゲームセンターのお仕事」。個人経営ゲームセンターの裏側で何が行なわれているのか? お店によってもだいぶちがうと思いますが、ここでは僕の経験を赤裸々に語りたいと思います!
前回は「『プライズ』とはなんぞや!?」についての概要を説明させてもらいました。第4回目はその実践編です!
「ミカド」のプライズ機を使って稼働向上に挑戦!
と言っても僕が店長をしている「高田馬場ゲーセンミカド」はこのジャンルにまったくチカラを入れてなくて、プライズ機が現在「NEW UFOキャッチャー」1台しかない(笑)。しかもこの筐体の設置理由は、以前僕がつとめていた「ファンファン新小岩店」で、僕自身が手塩に掛けていた筐体となんと中古屋さんの倉庫で再会したからなのです(塗装剥がれを隠すため、ボディにダイノックシートが貼ってあるので一目で分かる)!! それを感動のあまり衝動買いしてしまっただけという……。
えーっと、気を取り直していきましょう!
前回の記事でゲームセンターの店員さんは景品原価率という数字をもとに、プライズ機の設定や仕入れなどをしていると書きました。しかし、いくらいい商品を仕入れたとしても、はたまた、絶妙な設定をほどこしたとしても、遊んでもらえなければ意味がない!
というわけでミカドのやる気のない(笑)「UFOキャッチャー」でどこまで効果があるか実践してみます。
あーあ、やる気ないにも程があるだろ(笑)。さっそく、テコ入れ第1弾として「装飾変更」を実践してみます。「装飾」とは、筐体の見た目、アイキャッチをよくして、お客様にコインを投入してもらうというお仕事になります。お店によっては「“プロのデザイナー”でも雇ってるの?」というくらいステキな装飾がほどこされていたり、最近だと液晶モニターで商品の宣伝を流したりと、そのテクニックはさまざまです。
……で、ミカドはというと、さっそく100円ショップで部材を購入してきました(笑)。しょぼい? いやいや、装飾のポイントはひとつ! 装飾はあくまで、使用している景品に見た目で勝っちゃダメなんです。景品がしょぼく見える装飾は本末転倒。「うわーきれい」で終わりです。なので100円ショップで十分なのだ!
あと、装飾のほかに景品の魅力を伝える「POP」も重要ですよね。最近じゃ景品にかならず付属していたりもしますが、それ以外にも手描きだったり、PCで出力したりと、お店の個性が見られる部分です。
せっかくなんで、在庫置き場(失礼!)となっていたカップ焼きそばも、ディーゼルに良く似た時計を業者さんから格安で購入して入れ替えてみました。設定的には5回に1回取れるくらいを目安に。
設定については景品がアームに触れると「かならず動く」というのを心がけるとインチキ臭が薄れます。プライズ機だって立派なゲームなんだからさ、「なでるだけ」の設定はゲームじゃねーよ。ゲームはジャンルを問わず反応、アクションが無ければクソゲーなんです。
……ふふふ、インカムUPしてくれるかな? 楽しみだぜ!
「装飾変更」で見た目もインカムもアップアップ!
1週間後。出ました! インカム表!!!
おおおお!!! 上がってるよ!!! まさか、この程度のテコ入れでインカムが上昇するとは! 僕自身も初心にかえるというか、重要性を再認識しました。
あとは景品の在庫とインカムを(できれば毎日)チェックし、景品原価率を確認、数値が高いようなら設定をしぼり、低すぎるようなら設定を甘くするのが定石となりますが、 「このままもう少し低い原価率で引っ張ろう!」 とか 「もうこれ以上は見込めないかな?よし、激甘くして出しちゃえ!」 といった判断は、各お店のプライズ担当者の手腕となります。
また設定は、アームの強さのほかに景品の置き方も重要です。基本的にUFOキャッチャーに入っている景品って、床に対してアームが入り込めるクリアランスが皆無だと構造上非常に取れにくいので、稼働させる前にかならず「クリアランスを考慮した置き方」を考えたり、「袋詰め」「輪っか状の部品取り付け」などインチキ臭をひたすらなくす努力をします。
また、お客様のプレイ後に景品がとっ散らかって取れにくい状態になってしまう(見た目もよくない)のをスタッフが巡回時、つねに低位置に戻すという作業を「手直し」なんて呼んでいます。とくにプライズメインのお店だとこの「手直し」が焼肉屋で言うところの鉄板変更くらいの重要度となっており、インカム上昇のキモとなっています。大手のお店だと専属スタッフを用意している場合もあるぐらいです。
プライズ機の魅力はオペレーターが引き出す!
とまぁ前回の記事では「作戦/戦略」今回は「実践」とプライズ機について記事を書いてみましたがいかがだったでしょうか。僕はかつてGM商事さんがお店を出していた「大慶園」ほか、プライズ機しか無いお店のゲーセンで長いこと働いておりましたが、とにかくプライズ機っていうのは売上の限界がない(1回3秒とかで終わる)ある意味究極のコインオペレートマシンと言えます。
実際、当時「たまごっち」や「お茶パンダ」とかのヒット商品で1台のUFOキャッチャーが1日で18万円もインカムをかせいだ経験があります。これが僕の経験上のMAX数値です。しかし、それもお店のスタッフの戦略や努力がなければまったく機能しないと考えると、非常にテクニカルなマシンとも言えるでしょう。
好立地や人気キャラクター商材の仕入れ能力を生かしているだけで「なでるUFOキャッチャー」を稼働させているお店もまだまだ多い現状ですが、ここを読んでいる皆さんはそういう台をプレイしないように(笑)!
健全なプライズ運営をしているお店で気に入った景品を見かけたら、プレイの前にぜひ、「置き方」「装飾」「POP」なんかにも注目してみてください。お店の汗と涙と努力の結晶を感じられると思います。プレイ後も、店員さんを呼ばずとも、すばやく「置きなおし」や「手直し」に来てくれたらもうほんと最高ですよね(僕もがんばらなくっちゃ)!
なお、前回と今回の原稿を執筆するにあたり、僕が以前在籍していたGM商事という会社のもと上司であり、現在は独立してアミューズメント、ゲームセンター向けの景品販売を実施している会社「株式会社レインボー」代表・豊田社長にご協力いただきました。ありがとうございます。
(文・イケダミノロック)
著者プロフィール
- ゲームセンター店長
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株式会社INH代表取締役、高田馬場ゲーセンミカド店長。一応プロのギタリストです。ゲームとかパチンコの曲を録音させてもらったり、ゲームミュージックの公式バンドもやってます。
関連リンク
■高田馬場ゲーセンミカド
■HMR
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