【第2回】 ゲームの攻略中はまさに夢の時間!(いい夢とは限りません)

前回はゲームライターが攻略をする前に行なう下準備のような作業について触れました。今回はゲームライターの主要な作業、ゲームプレイについてのお話ですね。

 

最初から完成したゲームが来るとはかぎらない!?

発売されるゲームの本を作るのだから、発売されるゲームをプレイする……そう思う方が多いかもしれません。しかしゲーム発売と同時期に出版される攻略本を作るときは、多くの場合で最初に渡されるロム(ゲームソフト)は未完成品。最初から完成品をプレイできるのは、ゲームの発売から少し時間が経った時期に出版される本を作るときくらいですね。

「まだ完成してないから、とりあえず未完成品だけどこれでゲームの雰囲気をつかんでおいてよ」

という意味合いもあってこういうロムを先に渡してくれることが多いのですが、実はこれが製品版にくらべてはるかにぶっ飛んだバランスで、逆にそれが面白かったりするんですよね(笑)。

ゲームの本筋に関係ないムービーやイベントなどは明らかに作られていないことも多く、セリフは入っているがムービーは怪しい泥人形が謎ポーズを取っていたりと、「制作会社のスタッフさん楽しんでいるなぁ」と思わされることもしばしば。

ただし、その段階ではもちろん攻略もできなければ原稿も書けません。この段階のロムの時期がどれだけ短い(あるいは長引く)かによって、その攻略本を書くライターがどれほど苦しむかが決まると言っても過言ではないんです。

 

攻略途中での仕様変更は当たり前なんですか?

開発がある程度進むと、制作会社から「これで攻略を進めていいよ」というロムが渡されます。このとき、多くの場合で「あとはバグ取りくらいで、バランスは『だいたい』このまま」という趣旨の発言があります。しかし多くのライターはこの「だいたい」に泣かされることが多いんですよね。

そうか、このロムから大して変わらないのか……それならこれは使えるな! そうやって使えると思ったネタが、つぎに送られてきたロムで使えなくされていることなんてザラです。例えば、オンラインゲームではそれまで強かったものがアップデート後に弱体化される、といったこともありますが、あれがしょっちゅう起こると考えてもらえば分かりやすいかもしれません。

もう「だいたい」このままって言ってたでしょ。なんで変わってるのさ!

そう言いたくなりますが、言ったところで「変わらないとは言ってない」と返されるのがオチですし、そもそもそんなことを言えるような立場でもないので泣きながらやり直すしかありません。もちろん、それによって生じた時間の損失などは収入に反映されないのです。

最近は【残業代0法案】が政治の問題で取り上げられていますが、労働時間ではなく成果で報酬が決まるという点でライターはこの業務形態に近いですね。ただし、高収入を得られるのは超有名な売れっ子くらいのものですが……。

 

ライターはデバッガーも兼ねていますか?

これは製作会社との関係の深さにもよりますが、信頼されていると意見を聞かれたりもします。その昔、電話回線で通信対戦をするハードで、とあるメカが登場する対戦ゲームにおいて、製作会社のデバック担当と対戦をする機会をいただけたことがあります。

こちらとしては開発側がどういう使い方や戦い方をしてくるかに興味があったのですが、そのときは制作した攻略データとその運用の成果もあって、こちらが開発側を完膚なきまでに叩きのめしました。我ながら、いい構成のフレーム表と作戦を立てたものだ……。

などと悦に入っていたのもわずか数日。予告なく送られてきたつぎのロムでは、私の使っていたものがピンポイントで弱体化されてるじゃないですか(怒)! テストマッチのあと、いろいろ聞かれたのはこのためだったのです。

協力関係にある以上は不具合などがあれば報告するのは当然ですが、バグでもない部分でバランス調整が入り、報告した部分を中心にゲーム性が変わって(攻略法が変更されて)しまうのはなかなかきつかったですね。これに懲りた私は、ゲーム性を致命的に損なうものでなければネタを隠匿することにしました……。発売後に記事やユーザーの手によってそれが判明したとしても、製品になってしまえばさすがにバランスの変えようがないからです。

しかし、時代の進歩はこの慎ましい抵抗手段をも使えなくしてきました。

 

オンラインアップデートでこの本は使い物にならなくなったよね

近年はゲーム機のオンライン化が進んでいます。それにより、発売後にゲームデータを変更することも可能となりました。これが攻略という仕事に与えた影響は、致命的とも言える大きさだったのです。

ゲーム発売後にデータが変更されると、同時期に出版した書籍の掲載内容はまったくの役立たずとなる可能性があります。これに対し出版側の取れる手段としては、情報の有効期限を定めることくらいしかありません。

-このデータは○月現在のもので、それ以降のアップデートには対応しません-

というような趣旨の表記を目にしたことの方もいると思いますが、そういうことなのです。これにより攻略の仕事は、「おそらく変わることのない部分」を重視する必要が出てきました。個別部分を深く掘り下げてもそれが大人気もしくは反感を呼べば変わってしまうのですから、仕方がありません。

純粋に攻略するというよりは資料集のようなタイプのものが増えてきたのもそのためですし、大して調整が入らないであろう序盤部分だけを扱うものが増えたのもこれが理由のひとつです。時代の流れ、と言ってしまえばそれまでなのですが……ちょっとさびしいですね。

少々暗い話になってしまったので、今回はこのあたりで区切りますね。次回以降はゲームプレイの結果を紙面に反映する際の作業、原稿作成や撮影についてお話します!

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著者プロフィール

台風一家ゲームライター
ゲームを始めて、はや○十年となりました。小さいころはロボアニメをよく見ていたせいか、ライターになってもロボにやたら縁があります。「誰かの成功から学ぶ」ためでなく「誰かの失敗を繰り返さない」ために歴史を学んでいましたが、あまりその教訓は生かされていない気がしますね。