【第4回】 簡単に思えるゲーム画面の撮影も、じつは大変な作業
今回は原稿作成の一環でもある撮影についてのお話です。とくに苦労する点はなさそうに思える撮影ですが、これがなかなかに面倒くさい……(笑)。過去に使われた手段なども含め、撮影について紹介していきます。
昔はテープに録画していたのでしょうか?
これに関してはの答えはyesです。現在ではPCにキャプチャーボードを搭載し、そこにゲーム機から出力して撮影するのが主流ですが、そこまでPC関連が発達していなかった時代ではテープに映像を録画して撮影していました。
ただし画質の問題があるので、一般的なVHSなどのビデオデッキではなく、機材もテープも非常に高価な特別規格のものが使用されていました。しかしこれは、ランニングコストが尋常ではないほどに高くつくロクでもないシステムでしたね。
たとえばテープひとつ取っても180分ほどのものが確か1000円強はした記憶がありますし、画像劣化の問題からせいぜい2~3回の重ね撮りが限度という状態です。とある編集部では、使い古しのテープが山のように積んでありましたが、合計したらテープ代だけでいくらになるんだろう、と考えただけでも恐ろしい……。
また、運悪く機材が故障しようものなら街の電気屋では手に負えないため、本社などへ送られ一週間は戻りません。しかもメーカー直々ということもありオフィシャルの高額な修理代を請求されます。デッキ自体も6桁に到達する勢いの価格でしたし、今思えば本当にひどかったですね。
ただ、そんな苦労も技術の進歩により解消されることになりました。攻略のほうが技術の進歩で苦しくなったのとは対照的ですね。
PCを利用することで自宅の撮影も可能に。技術の進歩に感謝!
デジタルビデオによるデッキとテープでの撮影が終焉を迎えPCでの撮影が主流になると、 それまで編プロなどへ行かなければならなかった撮影が自宅で行なうことも可能になってきました。しかしPC撮影初期の頃はキャプチャーボードが非常に高価で、よほどの売れっ子ライターでもない限りおいそれと購入できるものでもありません。
画質の問題で、まだHDDの容量がそこまで膨大でなくともいいのは救いではありましたが、いずれにしても自宅で撮影できるというのはある種のステータスとして羨望のまなざしを向けられたものです。あらゆる機材の高性能化と低価格化が進んだ現在では、とても考えられないことですけどね。
ちなみに現在ではHD対応で入力端子さえ揃っているなら1万円程度のキャプチャーボードでも仕事ができます。とあるハードの場合はコピーガードがあるためそれを回避する方法を考える必要はありますが、昔のように高価なキャプチャーボードを購入しなくても済むのは非常にありがたいことですね。
もっとも、映像の高解像度化にともないHDDにかかる負担も大きくなり、撮影に使うため無圧縮で録画を継続した場合は簡単に数百GBを越えてしまうんですよね。数年前の超円高時代に大容量のものを買っておいてよかったなぁと思うところです(笑)。
自宅で撮影できないようなゲームはどうする?
アーケードゲームや社外に出せない極秘のものについては自宅での撮影はできません。開発会社やその関連施設などへおもむき、そこで撮影するしかないのが実情です。その際は開発側で撮影機材や環境を整えてくれることもあれば、こちらで撮影用の機材を持ち込む場合もあります。
持ち込むとなった場合はPCやモニター、周辺機器などを運ぶことになるため、かさばって非常に面倒ですね。幸いなことに私は車を所有しているため苦労はいくらか軽減できましたけど、やっぱり大変でした。
また、自宅での撮影とちがい好きな時間にというわけにはいかず、どうしても先方との日時調整が必須です。多くのケースで撮影できる日時が限定されるため、行ける日は午前から夜まで一日中やり通しになります。それによって、とにかく疲れる作業になってしまうこともしばしば。これがあるために家庭用機以外の仕事を嫌う人すらいるほどですからね。
なお、ゲーム機は開発室や広報室、空室にスペースを確保してくれることが多いのですが、ごくまれに休憩室や通路の踊り場など人の往来が激しいところに置かれてしまうこともあり、その場合は背後に関係者の視線などを感じながら仕事をするという状況におちいります。
もちろん真面目に攻略してプレイしている場合はじっくり見られてもそれほど気になりません。しかし撮影の場合はコラムネタなどで本筋から外れたネタプレイを必要になることもあります。その場合は背後から感じる
「なんかおかしいプレイだが、こいつらに任せて大丈夫なのだろうか……」
といった、やや冷めた視線に対しての耐性がないと心が折れるかもしれません。自意識過剰なのかもしれませんが、仮にもプロとしてやっている以上は情けないところを見せたくないですから。
このように撮影もなかなか大変で、しかも時間を取られる鬼門ともいえる作業です。テープで撮影していた昔にくらべたら、確かに楽にはなっていますけどね。
次回は原稿作成を終えてそれらがチェックを受け、本が完成するまでにやることのお話をしようと思います。とりあえず、そこで一区切りとなるでしょうか。
著者プロフィール
- ゲームライター
- ゲームを始めて、はや○十年となりました。小さいころはロボアニメをよく見ていたせいか、ライターになってもロボにやたら縁があります。「誰かの成功から学ぶ」ためでなく「誰かの失敗を繰り返さない」ために歴史を学んでいましたが、あまりその教訓は生かされていない気がしますね。
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