第2回 初出社、初担当、そして初リリース!

みなさんこんにちは。サウンドクリエイターの佐藤 豪です。今年もあと1ヵ月。大分寒くなってきましたが、風邪をひいていたりしていませんか? じつは自分は人生初の肺炎にかかってしまったようで、今とても大変です;-; もはや言える立場ではないけれど(笑)、体調に気をつけて今年の残りを乗り切っていこう~。

さて、今回はサウンドクリエイターとして内定したあとのお話として、当時どんな機材環境だったのか、また、どんな感じで仕事を進めていったのかをお話ししたいと思います。

 

もうひとりのサウンドクリエイター、N君との出会い

内定も決まっていよいよ待望の初出社日となり、期待に胸をふくらませて出社。すると、N君というサウンド担当者とご対面した。このN君も本日が初出社で、先日内定したのだと言う。そう、前回自分が内定するに先立って内定者がいると書いたと思うけど、N君がその内定者だったのだ。

N君は音楽の仕事をしたいための手段としてゲーム会社を選んだタイプ。ゲームのことはあまりくわしくないが、音楽に関しては自分よりはるかにくわしかった。選考時のデモ曲も聴かせてもらったけど、高価なシーケンサー内蔵キーボードで作ったそうで、音楽レベルの高さを感じられた。しかし、パソコンは触ったことすらなかったらしい。

当時はPCをさわれる人なんて一般的にほぼおらず、事務職の人がPCで顧客情報を入力しているだけで「へぇ~パソコン使えるなんてすごいねぇ!」って言われていたような時代。そんななかで、PCを使って音楽を作る人なんてさらに少なかった。何はともあれ、セイブ開発のサウンドクリエイターは、自分とN君の2名体制となったのである。

 

プロの職場、理想と現実

入社して最初に気になるのはどんな開発機材があるのか、ってところだけど、このときは16chくらいのミキサーやMTRがあり、高価なシンセサイザーが並んでいるんだろうな、と勝手に想像していた。しかし、実際はミニキーボード、4トラックMTR、NEC製PC9801&MTR、NEC PC9801&自社開発サウンドボード、このくらいであった。まあ実際、当時の制作はこれくらいの機材でも十分だったんだよね。まだFM音源で音を鳴らしていた時代なので、高価なシンセも必要なかったりで。

とは言え、開発用シーケンサーソフトが使いにくかったり、サンプリングソフトのバグがひどく、まだディスク容量があるのに「もういっぱいで保存出来ません」なんて処理をされることもあって、僕らは結構悩まされていた。

当時は「プロの開発ツールなのに、なんでこんなに不具合があるの!?」って思ったもんだが、ゲームにかぎらず、世のなかすべての開発ツールなんてそんなものだったという現実を知ったのは、それから10年くらい経ってからだった。

このようなPC関係のトラブルは、PCの経験があって、ある程度バグ耐性もある俺にとっては何とか自己解決ができたが、PCに慣れてないN君はこの手のバグに悩まされつづけ、ある日とうとう出社しなくなり、そのまま退職してしまった。

以後ずっとサウンドは自分ひとりで担当することになった。N君には気の毒な話で、この件がなければセイブサウンドの歴史が変わっていたかもしれない。

 

「サワージ サウ」ってなんですか……?

入社して、初めて担当したのは『セイブカップサッカー』。これは自分ひとりで担当したわけではなく、上長が2名の外注者を起用したので、自分+外注2名で行なった。もっと厳密に言えば、ちょっとだけN君も作ってる。

チームセレクト画面の曲がN君の作品で、ステージ2&6面の曲もN君だが、途中にして退職したので自分が完成させています。外注の2名は、フリーランスの年齢的にもキャリア的にも先輩な方々なんだけど、ひとりは性格的にも作風的にもちょっと変わった人で、今でもよく覚えている。

会話をしていると、普通の人が関心を持たないであろうことに関心を示したり、熱く語りはじめるような人で、その第一印象はとても強烈だった。デモ作品も聴かせてもらったけど、中近東なテイストの曲ばかりでいろいろと理解できなかった覚えがある。

彼の曲はステージ4&8に採用された曲。これは上長立会いのもと、自分がかなりアレンジしたので、まだそこまで個性的な曲にはなってない。しかし、実際に提出してもらった原曲は、ゲームにもサッカーシーンにも似つかわしくない、なんともユニークな曲だった。

しかもご丁寧に曲名までつけて納品してくれてたのだが、これがまた個性的&意味不明な曲名で未だに忘れられないでいる。その名も「サワージ サウ」。当時、「どんな意味ですか?」って聞いた気がしたけど、的を射た回答をもらえなかった覚えがある。確か、

「なんか“サワージ サウ”って感じしませんか?」

みたいな返しだったような……。はっ! もしかして、今ググッてみれば、その真相が明かされるのであろうか???? というわけでさっそくググってみる。

……

……

……

……

グーグル「サワージ サウ に一致する情報は見つかりませんでした。」

サワージ サウ

(イラスト・花八)

……というわけで、22年経った現在でも、謎は謎のままである。でももし『セイブカップサッカー』がサントラ化する日が来たら、絶対「サワージ サウ」としてクレジットすると思います(笑)。

 

サウンドクリエイターのお仕事の流れ!

外注の話はこの辺にして、自分自身の制作の話をします。制作の流れは今も昔もあまり変わらず、まず、企画者からサウンドリストを渡されます。そこにはBGMと効果音がどんな用途で何個必要かが記されているので、そのなかから比較的早く必要とされる音から順番に制作していきます。

たとえば、サッカーゲームだったら、ボールを蹴る効果音あたりが早めに必要だったりとかします。BGMは「テスト中に音がなくてさびしい」という理由で、ゲーム中のBGM曲も1曲ぐらいはすぐにくれ、って言われることが多いかな。

作ってるときは、企画者にリテイクを沢山もらったりして結構しんどいですよ。ほかのクリエイティブな職業でもそうだと思うけど、サウンドクリエイターだって、やっぱリテイクが一番嫌なもの。だけど、そんな困難を乗り越えてできた曲が「画面や演出にとても合う」とか「この曲好きだわ!」って言ってもらえるとホント嬉しかったりします。

『セイブカップサッカー』は必要な音の注文数がそこまで多くなかったので、そんなにリテイクはなかった覚えがあります。むしろ、わりとスムーズだったと言うか。まあなんせ初仕事でしたし、リテイクですら初めてで、それも含めて楽しく仕事できたんじゃないかな。

 

機材の進化にともなう制作期間の変化

ちなみに、『セイブカップサッカー』はゲーム制作全体で約1年かけて作っています。サウンドはその後に出てくる予定の『ゼロチーム』と同時進行的な部分もあったので、制作期間は実質半年くらいだった気がします。

音の注文数についても、おぼろげな記憶ではBGM7曲、効果音30弱くらいだったんじゃないかな? これくらいの物量だと現在のスマートフォンゲームよりはるかに少ないし、今ならたぶん3週間くらいで作れると思う。

でも、べつに昔がちんたら時間かけて作っていたわけじゃないですよ。いろんな要因があるんだけど、そのなかのひとつとして開発環境の向上、という部分がまちがいなくありますね。

たとえば効果音を作るのに、シンセで「キラッ」って音を作って爆発音を重ねるとしたら、今なら波形を見たり、タイミングも自由に何度もやり直しながらソフトで微調整できるけど、当時はまだ波形をリアルタイムに見て前後に動かしたりできるソフトもなかったんです。

じゃあどうしていたのかと言うと、MTRの1chに「キラッ」って音を録音したら、つぎに2chに「キラッ」って音が鳴るであろうタイミングで爆発音を鳴らすんです! タイミングを計るのは脳内(笑)! もちろん速すぎたり、遅かったりとなかなか簡単には合いません。何度も何度もやり直して、ようやく偶然合ったりします。

合ったら、今度はそれを同時再生しながらPCでサンプリングする……もう本当にアナログな時代です。MTRもカセットテープのMTRだったからこれもまたアナログ。当時はこんな感じで、とにかく手間のかかる作り方をしていました。それで最終的に「合わない! リテイク!」とか言われると、倒れそうになる(笑)!

 

初めての担当作品が世に出たぞ!

そのような諸事情が取り巻く環境下で制作は進み、『セイブカップサッカー』はいよいよロケーションテスト(通称・ロケテ)に出ることに。当然自分も現地に調査をしに行く。アマチュア時代、客としてロケテの現場に行くことはあっても、関係者としてそこにいる日が来ようとは思ってもいなかったので、とても誇らしかった。

自分の役目は、騒がしいゲーセン環境で、聞こえて欲しい音がちゃんと聴こえるかのチェック。実際に自分でプレイし、音を確認。気になったところをメモしあとで修正をするんだけど、そのたびに会社に戻ってROMを何度も焼き直さないといけないので、けっこう時間のかかる作業だった。

でも、ロケテ静観中は、何度も繰り返してプレイしてくれる人とかいると本当に嬉しかったりと、楽しい思い出が多いです。インカムもまずまずの手応えで、自分たちの作ったものが良い結果を出せていることで、更に誇らしさが増す。こうして初めて音を担当したゲーム『セイブカップサッカー』は、ゲームセンターの何軒かに1軒は稼働しているくらいの成功を収めたのでした。

(文・佐藤 豪)

【イラストレーター紹介】

花八 イラストのお仕事をしております。BLのソーシャルゲームでカードやスチルのイラストを担当させていただいております。お仕事募集中です。よろしくお願いいたします。

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著者プロフィール

佐藤 豪
佐藤 豪サウンドクリエイター
ゲームサウンドクリエイター。気が付いたら24年この仕事やってます。作曲はもちろん、効果音が好きで効果音の研究に取り組んでいます。代表曲は『雷電II』『バイパーフェイズ1』『チョコットランド』など。

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