【第8回】音楽家編集L、華麗なる仕事ぶりを見せる(前編)

新年あけましておめでとうございます。本年もまずは記事を書かせていただけるとのことですので、ぜひよろしくお願い申し上げます。

さて、皆様は大晦日にどのような過ごされ方をされたでしょうか。我が家では親類なども集まって宴会しながらという形が多いのですが、20時からは毎年ベートーベンの第九を見ることになっています。

言わずと知れたクラシックの名曲ですが、私はこれを聞くたびにとある編集者のことを思いだします。今回はそんな、音楽家のような編集者のお話です。もちろん「もともと音楽関係だった」というようなくだらないオチではありませんので、ご安心を。

 

出会いはごく普通に

今回のお話で主役となる某編集者、ここは「L氏」とでもしておきますね。このL氏の最初の顔合わせで感じた印象といえば、見た目も性格もとくにおかしいところはなく、これなら普通に仕事をご一緒していけそうかなぁというものでした。

打ち合わせも無事に進み、担当の割り振りなどもしっかり決まり、各自が原稿の作業に入りました。メーカーと質問のやり取りをしたり、送られてきた資料を整理して送ってきたりと、サポートでついていた人ができると評判だった方だったこともあり、至って順調なペースです。

「あの編プロでの仕事でここまで順調なことって、これが初めてなんじゃないかな?」

というような話をしていたくらい、サクサク進んだものでした。そんな状況ですから原稿の作成も順調に進み、予定の締め切りよりずいぶん早く仕上がりました。これを先方に渡して、多少の修正が入るとしても…これは別件の仕事もいけるなぁ! などと考えつつ原稿を送りましたが、今回はそこからが大問題となってしまったのです。

 

意味の分からない指摘に困惑

渡した原稿がチェックされ、修正依頼が来るということは以前にも紹介したと思います。編集さんのスタイルによっては小さいものなら自分でやってしまう方もいますし、句読点の打ち方が当人とずれているだけで差し戻してくるような方もいます。

なにしろ資格のある仕事でないのは原稿を書く側だけでなく、チェックする側も同様です。業界で「編集資格○種」みたいな統一のものができれば個人のスタイルで振り回されないと思いますが、いまのところそういったものができるとか創設するという話は出ていません。まあ、下手をすれば言論統制につながりかねないのでおそらくは無理なのでしょう。

そしてこのL氏、文章のチェックに関してはとてつもなく独特のスタイルの持ち主だったのです。

ゲームに造詣がない編集さんの文章への指摘といえば誤字脱字や文言の使い方のまちがい、もう少しできる人物だと「ゲーム内での使われ方でこの表現はどうなのか」というところまで来ます。例えば「大パンチじゃなくて強パンチね。某誌じゃないんだからw」みたいなことですね。

よりよいものを完成させるためにも、このチェックは欠かせない重要なものです。ただ物理的には制限時間がありますし、同じ作業の繰り返しなので長くつづくと精神的にもくるものがあります。それでも、よりよい本にするため……とこの作業にのぞむわけですが、このL氏は本当にひどかった。

最初に返ってきた修正の第一句が「意味不明」でした。意味不明ってなにが意味不明なの? こっちが意味不明だよ。どこの部分が意味不明なのか指摘してもらわないと、直すに直せないんですが……ということでさっそく連絡を取って聞いてみると、これまたすごいことに。

L :「いやね、読んでいて分からない単語が多くってさあ」
台風:「あれシステム編や用語集とかで説明するからOKってことでしたよ」
L :「そうだっけ? まあ専門用語だと分かりにくいからさ」
台風:「ということは、いちいち←→△ボタンで剣から出る衝撃波状の物体、とでも書けということですか?」
L :「まあそこまでしなくていいけど、もうちょっとさあ……」

さすがに閉口したといいますか、そういう修正が来たことはなかったので鮮明に覚えています。使っていいという約束を反故にして、それでも専門用語ばかりだと嫌だというならそう書けばいいのに、ろくな説明もなく意味不明の一言で送り返してきたのにも驚きましたしね。

しかし本当の地獄はここからでした。

 

繰り返される無意味なやり取り

専門用語ばかりでは嫌だというので、一部を説明付きに変えたりして再提出しました。それが返ってきたときに書かれていたのは「くどい!」の一言です。

「あなたが専門用語ばかりは嫌だというから説明を増やしたんだよ?」

と思いつつ、仕方がないから説明が多くならないように修正して出すと、つぎは「舌ったらず」でした。

「お前がくどいというから軽くしたんだぞ?」

う~ん、いったい我々はどこに向かっているのか。そんな疑問も感じつつ、リライトしたものを送りました。そしてLへの評価を決定付けるとんでもない一言とともに、またもや返されてきました。

「もっと専門用語を多く使えば、かなり文がよくなると思います」

!!!!!!!!!!!!

「テメー3日前(最初の修正)に自分でやったことをもう忘れてやがるのかよ。いい加減にしろ!」

さすがに怒りを覚えた私は、本来ならやらないほうがいいと思われる対抗手段を取りました。その手段とは……次回のお楽しみということに。

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著者プロフィール

台風一家ゲームライター
ゲームを始めて、はや○十年となりました。小さいころはロボアニメをよく見ていたせいか、ライターになってもロボにやたら縁があります。「誰かの成功から学ぶ」ためでなく「誰かの失敗を繰り返さない」ために歴史を学んでいましたが、あまりその教訓は生かされていない気がしますね。