第2回 仕様書なければゲームは作れん

どうも、風来の企画屋です。2回目の今回は、企画屋の仕事のなかでもおもな作業となる「仕様書」について書いてみたいと思います。

仕様書はゲームの「設計図」

ゲームを作るときには色々なモノが必要になります。パソコンはもちろんのことながら、対象ハードごとの専用開発機、プログラム用ソフト、デザイン用ソフト、人材、お金、時間……そんななか「仕様書」ってのが、ゲーム作りには一番重要なモノなのではないかと(私は)思っています。

仕様書とは、文字どおり「仕様が書かれている書類」で、いわばゲームの「設計図」のようなモノです。第1回でも書きましたが、ゲーム作りとはプラモデル作りのようなもので、用意されたプラスチックのパーツ(ゲームでは絵素材等)を設計図どおりに組み上げていくと完成します。なので、この設計図がものすごい重要。

設計図がまちがっていたらせっかくの絵素材もうまいこと使われなかったり、意図したような完成形にならなかったり、ヘタしたら完成せずにお蔵入り(※1)になる場合もあります。世に出ている「ちょっと残念なデキのゲーム」は往々にしてこの設計図がダメ、もしくは設計図なしで作っていることが多いと断言できます。

「設計図なしで作れるのか!?」って? 本当は作れません。作れないはずなんですが、どういう訳か作れてしまう場合があるんですよねぇ、不思議なことに。

「なくても作れるならその方がいいんじゃね?」とか思う人もいるでしょうけど、ない場合にゲームが出来上がるのは、舵取りしているディレクターの頭のなかに設計図がすべてできあがっていたり、完成形の明確なイメージがあったりする場合がほとんど。

つまり、そのぐらいの思い入れと才能、センスがある場合にかぎり、仕様書なしでもゲームは完成します。ただ、それはほんの一握りの天才に限った事であり、大概は無理です。んで、仕様書がない状態でゲームを作り出すとどうなるかというと、作っては壊し、壊しては見直し……というネバーエンディング状態になり、関わっているスタッフが大変なことになります。

今日作っている部分が明日には変更になってしまったり、まさに今作っている部分が数時間後にはボツにされたりしたらどんなにやる気がある人でも凹みますし、非常に疲れます(疲れるぐらいだったら寝たり休んだりすればいいのですが……心労がたたると下手したら倒れますからね)。

なので、私は関わったプロジェクトでは可能な限り仕様書を作るようにしますし、なるべくイラストやフローチャートを使用してイメージを具現化して伝える努力をしています(努力ですからね、努力。「やっている」とは言い切らない)。

設計図=仕様書はあったとしても面白いと思われるようにするまで修正や調整を行ないますので、最終的にはまったく仕様とちがうモノになったりするのですが、それにしても基準となる仕様がないと「RPG(※2)を作っていたら、いつの間にかシューティングになっていた」なんていうことになりかねません(シューティングになったんだったらそれはそれでうらやましいかぎりだが)。

仕様書を作るには時間が必要!

私はフリーランスの企画屋の為、プランニングの仕事があるとどこへでも行きますし、デスマーチ(※3)状態のプロジェクトに途中から放り込まれる事もあります。当たり前の話ですが、プランナーが足りていないところに呼ばれる訳ですので、入った瞬間に仕様書が足りていないというのが普通です。

なので、入ったらすぐに今の状況と足りていない部分、仕様の抜けや問題点の洗い出しなどのあと、仕様書作成に入るのですが、すでにいるスタッフ(とくにディレクターやプロデューサー、プランナー)さんが……足りていないモノが何かを把握していない場合が多い!!

・なんとなく企画が足りてないから人を入れてみた(なんとなく?)。
・プログラマーから仕様が決まってないから作れないと言われた(当たり前だろ)。
・発売日が決まっているのにどういう訳か完成しない(知らんがな)。
↑これらは私が今まで会社のプロジェクト説明の場で言われたことの一部です。笑えない&恐ろしい話ですが事実なんですよねぇ……。

「何が問題になっているか」「どうすればいいのか」が分かっていない状態なので、とりあえず経験豊富な人間を入れれば円滑に回るようになるだろう、と考えていらっしゃるようなのですが、そういう人が上に立っていると結構ヤバい状態です。ま、そんな危ない状態だからこそ風来の企画屋のような人間が食べていけるのですが(苦笑)。

おっと……仕様書の話から脱線しましたね。話を戻します。ゲーム作りの指針となる仕様書は、スタッフにざっくりとした説明をするときに用いるモノと、そのざっくり仕様をパートごとに細かく噛み砕いて煮詰めたモノの2種類の書き方があります。

ざっくりバージョンは概略的な部分や全体像、ルール決めが多いです。たとえばゲーム開始から終了までの全体の流れ(※4)や全何ステージなのか、ステージ以外での要素(装備品変更画面など)は何があるのかといったことをまとめます。ルール部分ではどうやったらゲームオーバーなのか、ステージクリアの条件はいくつあるのか……など。

これらのざっくりしたモノを元にプログラマーさんやデザイナーさん、サウンドさんと第一弾打ち合わせを行ないます。その席で出た質問や早めに詳細を決めて欲しいことなどを持ち帰り、つぎの「詳細まで煮詰めた仕様書」の作成に入ります。

さて、煮詰めた仕様書の作成ですが……時間かかります。大変です。やってもやっても終わりません。泣きそうになります。でも、プログラマーさんやデザイナーさんはそれを待ってます。帰れません。でも帰らないと疲れますし、翌日の作業に支障をきたします。

そんな感じです。全然分からない? でしょうね。

でも詳細は書けないんです。ゲームのジャンルごとにある程度のフォーマットとか書かなければいけないことみたいなものはあるのですが、そんなのは全体の数パーセント程度で、残りはゲームごとに全然ちがうのでここでどう書いていいモノか……。

簡単に言うと、ゲームの1画面ごとの仕様書は最低でも10項目程度は必要で、さらにその画面に使う2Dや3Dの絵素材、鳴らす音などにも別途仕様が必要とお考え頂ければよろしいかと。アクションゲームの場合、ひとつのステージで最低10項目、少なく見積もって5ステージあるゲームの場合は約50項目分の仕様とデザイン&サウンド仕様が必要となります。

で、1項目作るのに(どの部分かにもよりますが)最低でも2~3日。単純に50をかけると、100~150日かかる計算に。アクションゲームでこのレベルですから、戦闘や町、成長要素やアイテムなどが山ほどあるRPGとなるとその物量たるや尋常ではありません。

とはいえ、これはひとりで全部やったときの概算ですし、1項目できたら応用や名称変更ですむ仕様やルールもありますので本当に150日もかかる訳ではありません。さすがに私もそんな物量はひとりでは無理(笑)。

さて、そうしてできた仕様をもとに、再度プログラマーさんやデザイナーさんと打ち合わせを行ないます。長くなりましたので、そこでのやり取りはまたの機会といたしましょうか。今回も最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。

【用語解説】

※1……お蔵入り 発売中止のこと。もとは「お蔵に大事にしまっておき、良きタイミングで使用(発売)する」という意味だったのだが、そんなことは万にひとつもないので「お蔵入り」=発売中止と同義となった。某京都の会社さんではお蔵入りのソフトは後日、日の目を見ることが多いです。とはいえ「後日」=数年後ということが多い。

※2……RPG ロールプレイングゲームの略。英字の間に「.」が入るとどこぞの会社の商標となってしまうのでご注意を。

※3……デスマーチ 「完成のメドが立っていないのに締切だけが刻一刻と近づいてきており、スタッフが疲弊しピリピリしている」状態のことを指す。または「何となく完成しているように見えるが、少し遊んでみるとまともに遊べなかったり山ほどバグ(不具合)があったりするのに発売日が決まっている」状態のこと。どちらにしてもグチャグチャ、ドロドロの状態。死に体状態とも言う。※この状況におちいる条件としては仕様書がない、クライアントが無茶言う、スタッフが足りない、そもそも無理! など、理由はさまざま。

※4……全体の流れ 会社さんによってもちがいますが「ゼネラルフロー」と呼ばれることが多い。ゲーム全体を1本の木として説明したり、フローチャートを絵や画面でつなげて説明する。非常におおざっぱではあるが、一度決めるとなかなかくつがえらないため、いろいろな場面で役立つ。これを作らないと「今思い付いたんだけど、ここで分岐すればおもしろくね?」とか言い出す輩が出てくる。ゼネラルフローから外れるような仕様は大改修になるんじゃ、ボケが!

(文・風来の企画屋)

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著者プロフィール

風来の企画屋ゲームプランナー
中古ファミコン屋店長からスタートし、プログラマーを経てゲーム企画屋に。ディレクターも頼まれればやるし、プロデューサー経験もあるが「やっぱり企画が面白い!」と企画に固執いているオッサン。来年発売のダライアスをPS4版でやろうかVita版でやろうか悩み中。