第4回 『バイパーフェイズ1』の開発話! 好き勝手やりたい放題やった!

こんにちは、佐藤 豪です。今年はとても寒くて、雪も結構な頻度で降っていますがいかがお過ごしですか? 最近は、高田馬場ゲーセンミカドが連日大勢のお客さんでにぎわっていて、昔のゲーセン全盛期を思い出させてくれる勢いですが、とても嬉しいですね!

俺もちょいちょいドルアーガやりに出没してたりします。ミカドに置いてあるゲームはどれも古いものばかりですが、未だにこれだけ人を呼べるなんて、昔のゲームの底力を感じます。もちろんミカドさんのさまざまな努力あってのものですけどね。

『バイパーフェイズ1』に合わせて開発環境も一新!

さて、今回は『バイパーフェイズ1(以下、バイパー)』の話です! セイブ開発時代で一番思い出深かったのがこの『バイパー』でした。音源チップも新型で制作機材環境も大幅向上し、何しろ企画からの指示がなく好き勝手にできた夢のようなタイトルだったから(笑)。

『雷電II』まではFM音源だったけど、『バイパー』ではSPI基板という自社開発新基板が使用され、音源チップもOPXと呼ばれたものが採用され大幅性能アップ!

このOPX、当時は本当に凄くて、PCM12声がFM音源と混在して使用できたり。チップひとつでPCMとFM音源が使えただけでもすごいのに、PCMの音にFM変調かけたりすることもできて、とにかく画期的な音源チップだった。

PCM音源部はプリセットの音色がまったくないので、もとの音色データから自分で用意する必要があったんだけど、これまでろくなシンセが社内にありませんでした。

でも、これを機にシンセサイザーモジュールやガンマイク、エフェクターなどを一気に買いそろえてもらえたおかげで、自分史上、かつてないハイクオリティなサウンド制作にとりかかることが可能になりました。

大手のメーカーは数年前からオールPCM音源のサウンドが普通になっていたので、やっと追いついた、そんな気持ちでもありました。

ちなみに買った音源はヤマハの「TG-500」というもので、バイパーでメチャクチャ音色が使用されています。聴けばすぐわかるんじゃないかな?

この「TG―500」、音がいいのはもちろん、思い出深さもあってのちに個人で購入しました。今は使うことはほぼないけれど、まだ手放せずに持っています!

自分で好き勝手に作曲できるなんて!

『雷電II』は企画者のイメージに徹底して合わせて制作したわけだけど、『バイパー』の企画者は雷電とはちがう人だったので、まずは企画者の意向を聞くことにした。

俺 :「『バイパー』、宇宙が世界観の主軸みたいですが、どんなサウンドにします?」
企画:「今回初めてゲーム企画担当するんで、音のことよくわからないからまかせるよ。佐藤さんが合うと思うもの作ってくれれば」

自分で好き勝手できるなんて最高過ぎる(笑)! ちなみに完全おまかせで好き勝手に作曲できたのは、『バイパー』以後ないです。

もちろん、すべてをまかされるというのは今まで以上に責任重大だけど、こんなことを夢見てこの世界に入ったので、これはやるしかない!!

『バイパー』は『雷電II』とちがい、完全に宇宙が舞台だったので、まず宇宙を疾走するスピード感と、宇宙の浮遊感や美しさを音楽で表現したいなと考えた。

ジャンル的にもロックではなくフュージョンぽいアプローチで、部分ごとに趣味的な色を出したくて、スラップベースの楽曲を採用してみたり。ベーシストだしね。

そう考えて最初にできあがったのが、2面のBGM「OUTER SPACE」。全曲のなかでこの曲が一番宇宙っぽさを感じてもらえたんじゃないだろうか? 個人的にもとても気に入ってる曲です。

テスト環境に組み込むとき、何面の曲にしようか悩むんですが『バイパー』のときはすぐ2面に決めました。1面が敵基地のなかを脱出するステージで、2面で初めて宇宙に出るんだけど「OUTER SPACE」のイントロがこの宇宙に出た瞬間にとても良くマッチしていたのが決定理由。

つぎは1面のマップを見てイメージが湧いたので、1面の曲「GO STRAIGHT AHEAD!」を制作。まだサントラ化の話もないのに、この時すでに曲名までつけていた(笑)。

この曲は疾走感を出したかったけど、16ビートのスラップベース主体で疾走感を出そうと思って作ったんだよね。そういう音楽が好きだったし、雷電にはないアプローチだったし。

この曲は宇宙的な曲調ではなかったから、逆に2面が始まった時にガラリと雰囲気変わって、よりうまく2面から宇宙が始まった感を出せたなとも思ってます。

こんな感じで、当時自分の能力でできることは全部出し切ったくらいすべてを注いでいった。リテイクを出す人がいないからこそ細部にまでこだわったし、何曲も自分で作ってボツにしたり、効果音も自分で必要と思うものは、締め切り近くて時間がきびしくてもどんどん増やしていった。

バイパー作っている時が一番徹夜したんじゃないかな。もちろん締め切りが近くてっていうのもあったけど、作っていて気が付いたら終電まぎわで、このまま帰るのは惜しいなってことでそのまま自主的に徹夜してみたり。

コンティニューミュージックの秘密

ところでリテイクなしと言ったけど、じつはひとつだけリテイクがあったんだよね。コンティニューの曲で「Unused Music」という未使用曲があって、実はこれがもともとのコンティニュー曲でした(ミカドさんから発売されてたサントラに収録)。

開発もまもなく終わろうとするころ、バイパーの開発チームではない別のチームの人から、「コンティニューの曲だけどさ、なんか合わないと思うんだよ。」って言われて。

正直バイパーの開発にまったく関係ない人だったんで、言われる筋合いはないと思ったけど、まだ当時自分は新人あつかいで、その人はわりと古くからいる大先輩的な人だったので応じるしかなく。

「今から俺が横で指示出すから作って」

そう言われて、鍵盤でいろいろ弾いて見せて、横で指示を受けながら1時間ほどで完成させた。唯一リテイクされたコンティニュー曲はこんなエピソードがありました。実際、作風ちがう感じしません? なんかコミカルと言うか。

まあ、ボツった曲と指示された曲、どっちが良いかは聴いてくれる人に判断を委ねます(遠い目)。

当初は予定されていなかったサントラ化

こうしてバイパーは作られていき、いよいよ神田のゲーセンでロケテストが開始される。ロケの段階ではまだタイトル名が決まってなく、仮称で『OUTER SPACE(仮)』という名前がつけられていた。

あれ?って思った人。そう、2面の曲名はじつはここから拝借したんだよね。とにかく宇宙っぽさを表現したかった曲だから、このどストレートな曲名がピッタリだったんで。

肝心のロケテストの成績だけど、正直『雷電II』ほど良くなかったけど、それでも十分健闘しました。

無事完成して発売されると、つぎに期待するものはサントラCD化。発売後はネット(当時はまだインターネットではなくパソコン通信)でも曲が良いという意見も結構いただくことができたし、やるだけのことをやってきただけに自分としてもぜひ出して欲しかった……。でも、残念ながら、2005年にINHさんから発売されるまでサントラの話が出ることはなかった。

当時ちょっとしたエピソードがあって、とあるネットの書き込みでバイパーのサントラを熱望してる方がいたんです。ネット上でもサントラが出るらしいって噂が書かれたりして、いつ頃発売になるかわかりますか?って一生懸命質問されてたんだけど、サントラ化の話はなく。

そこへついメールして「制作者です。残念ですがサントラ化はありません」って連絡してしまった。それでも何とかしてあげたいって気持ちで、MDに録音したものを送りました。もちろん会社的にNGな行為ではあったけど、ここは時効ということで……。でも、とても喜んでくれていた事を今でもおぼえています。

そんなわけで『バイパーフェイズワン』、とても思い出深いタイトルでした!

(文・佐藤 豪)

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著者プロフィール

佐藤 豪
佐藤 豪サウンドクリエイター
ゲームサウンドクリエイター。気が付いたら24年この仕事やってます。作曲はもちろん、効果音が好きで効果音の研究に取り組んでいます。代表曲は『雷電II』『バイパーフェイズ1』『チョコットランド』など。

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