名ゲームの影に、名曲あり。ゲームを語るときに忘れてはならないのが、そのゲームを彩るサウンドだ。このコーナーでは、ゲームミュージックをこよなく愛するライター・碧(みどり)が自信をもっておすすめできるゲームミュージックのサウンドトラックを紹介していく。

■ドラゴンクエストのうた~ドラゴンクエスト・ベスト・ソング・コレクション~/ルーラ(1993年/ポリグラム)

loula

前回のレビューが『ファイナルファンタジー(以下、FF)』だったので、つぎは『ドラゴンクエスト(以下、DQ)』を取り上げようと決めていたが、どれにしようか、と悩んでいたときに目についたCDがこれ。

『DQV』エンディングの「結婚ワルツ」で1993年1月にデビューした女性デュオ「ルーラ」が、同年5月に引きつづきアルバムを発売した。これが、まるごと『DQ』のBGMに歌詞をつけて歌った「ドラゴンクエストのうた~ドラゴンクエスト・ベスト・ソング・コレクション~」だ。

『DQ』の歌ものといえば、『DQII』の説明書にも載っている、牧野アンナの「Love song 探して」(1987年)や、鴻上尚史の「そして伝説へ…/冒険の旅」(1988年)が真っ先に浮かぶ方も多いだろう。アニメ「ダイの大冒険」のエンディングテーマとして使われた団時朗の「この道わが旅」を挙げる人もいるかもしれない。

このアルバムは、それらのバンド調な構成よりも、ふたりのハモリを重視した構成になっている。ポップ曲調な「薔薇ふる空(原題:Lovesong探して)」や、団時朗バージョンを彷彿とさせる「この道わが旅」も収録されているが、ふたりのハーモニーが心地よく、ストリングスとボーカルだけで構成される「町の人々」につづいても違和感なく、アルバム全体としてまとまっている。さらっとBGMとして流していたら、『DQ』の曲だと気づかれないかもしれない。

ゲームミュージック好きの人間にとって、鼻歌が、ふんふんふーん、や、てれってれってー、なんてなってしまうことは多いだろう。いろんな曲を知っていても、カラオケで歌える曲が少ない、なんて局面もあるかもしれない。ところがなんとこの曲たち、カラオケに入っているのだ。先日、酔っぱらいつつ、『DQIII』の「街」を歌ってきたのでまちがいない。

惜しむらくは、アルバムがこれ1枚きりということと、『DQIV』の曲は1曲も収録されていない、ということだ。

■曲紹介

1.序曲~プロローグ(インストゥルメンタル)

シリーズおなじみの「序曲(ロトのテーマ)」。オープニングを感じさせるイントロのあとに聞き慣れたマーチが流れる。

2.結婚ワルツ/DQV

オリジナルは『DQV』エンディングおよび結婚式で流れる。『DQ』屈指の苦難を受ける主人公が、旅の途中で強制的に結婚しなければならない状況におちいるが「世界中のウェディングベル 鳴らしたような歓び」を感じるあたり、もはや苦難には耐性がついているのだろう。

3.街/DQIII

プレイ中もよく流れる曲なので、『DQIII』をプレイしたことのある人なら聞けばすぐにわかるだろう。特筆すべきはその歌詞で、歌いだしから、「街についてあなたは何をまずしますか 僕はきっと道行く人に声をかける 初めての街ならそれが大切」と、RPG初心者向けのガイドブックに書かれそうな内容となっている。

4.もう一つの名前(原題:哀愁物語)/DQV

パパスの手紙や回想シーンなんかで流れる曲。プレイ中もさびしい曲だ、と思っていたが、ボーカルによってさらにその感じが増している。ふたりのかけあいによって、一条の光が差すように仕上がっている。

5.薔薇ふる空(原題:Love Song探して)/DQII

いい曲だ。牧野アンナバージョンもいいけど、このルーラバージョンもいい。「『DQII』といえば『Lovesong探して』」というほどに、このゲームを象徴している曲といえる。ふっかつのじゅもんを入れるとき(+ペルポイのアンナイベント)にしか流れないものの、忘れられない曲であり、いかにそこにプレイ時間を割かれていたかがわかる。4つ打ちのドラムがリズムを取る、という、このアルバム唯一ともいえるポップ路線の曲。中盤と最後のサックスソロはもちろん、地味だがバッキングのピアノもおいしい。

6.海の子守唄(原題:海を越えて)/DQIII

この曲もプレイ中によく聞くので『DQIII』をやったことのある人ならパッと原曲がわかるだろう。ストリングスとボーカルが主役で、落ち着いた感じに構成されている。

7.町の人々(原題:街の人々)/DQI

よくこの短いループの曲を歌にしたものだ。原曲(ファミコン版)は12小節しかなかったが、このアルバムでは、オーケストラ版を基準にして中間部にも歌詞をつけて歌っている。この中間部でふたりのかけあいになるのだが、それぞれまったくちがう歌詞を歌っているため、歌詞カードがここだけ2列になっている。

8.この道わが旅/DQII

冒険終わったぜ、というスタッフロールが合いそうな曲。「薔薇ふる空」は原曲と歌詞がちがうが、こちらは藤公之介の歌詞そのままである。この道わが旅 果てしなく続く。

9.結婚ワルツ~エピローグ(インストゥルメンタル)

最後はインスト。2曲目のカラオケバージョンではなく、若干テンポが落とされておとなしめにアレンジされている。アルバム全体としては「この道わが旅」で締めて、余韻のような感じに仕上がっている。

唯一の『DQ』歌ものアルバム「ドラゴンクエストのうた」。現在は少々値が上がっていて6000~8000円で取引されているが、『DQ』ファンであれば一聴の価値はある。心地よく、それでいて元曲も好きなゲームミュージックなので、今でもよく聞いている。スクエニさんには『DQ』歌ものアルバムも、ぜひまた企画・発表していただきたい。

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著者プロフィール

碧(みどり)ライター
音楽好きな理系出身フリーライター。よくやるゲームは『リフレクビート』と『ぷよぷよテトリス』、『戦国大戦』。対戦格闘ゲームは『鉄拳』派、コンシューマはまったり派。『DQ』はII、『FF』はタクティクス、プロ野球は大洋ホエールズ。ゲームをやっていると、まずBGMが気になる。ゲーム音楽バンドがやりたい30代。