【第11回】ライター業が縁で出会ったゲーム(中編)

今回のお話は、前回からのつづきとなります。まだ前編をご覧になっていない方は、そちらからお読みください。

仕様上可能な策とは

発言を許された私は、集まった皆さんにこう言いました。
「私は相手にエールを送るのがいいと考えます」
この発言後は、さすがに場が静まり返りました。

――何を言ってるんだ、こいつは……。
――滅亡後、相手方に取り入ろうとか考えてるのか?
――まじめにやる気があるのかよ。

実際にそう発言されたわけではありませんが、明らかにそんな雰囲気になってしまいました。今にして思えばまちがいなく言葉が足りていなかったので、そうなるのも当然ですね。ただその当時はそう考えず、模擬戦で証明したいという話にしたのを覚えています。

模擬戦は師範が率いるエース軍団と、私が率いる準エース軍団での戦いになりました。エース軍団はかなりの使い手ばかりで、1パーティのみの比較であればサーバーでも有数の強さ。

それに対し準エース軍団は一般よりは上かなというくらいで、とても勝ち目があるとは思えない勝負です(ちなみにこの層の薄さが滅亡寸前まで追い込まれた理由で、トップ同士のタイマン勝負ではつねに優勢でした)。

この勝てるとは思えない勝負を、どこまで挽回できるか。私自身も「策」自体は試すのが初めてなので、この勝負で効果の確認をしようと思っていました。そして師範のパーティに移動してもらった後、模擬戦に参加しない方も含め残った皆さんにお願いをしたのです。

「合図を出したら、みんなで師範やそのパーティメンバーを応援してください。一斉に、できればしばらく」

小細工炸裂!

模擬戦は予想通り、私たちが劣勢となりました。しかし相手も本気ではないのか、思ったほど簡単には追いこまれていません。その策とやらが何なのか、それを見るまで勝負をつけるつもりもなかったのでしょう。

そこに油断があったのか、相手の前衛の壁役ふたりが同時に大ダメージを受ける事態が発生しました。壁役が倒れたら残りは打たれ弱い純攻撃役や回復、サポートなのでパーティとしては大ピンチです。

・どちらの壁役を先に回復するか
・どちらの壁がリスクを犯して敵の攻撃を引き受け、立て直す機会を待つか
・サポートは誰を補助し、もしくはどの敵に妨害を掛けるか

このように壁役のピンチは、パーティの強さが問われる重要局面です。私はここで、あらかじめ決めておいた合図を出しました。そして異変はすぐに、目に見て取れました。これの次はこれ、といった感じで動いていた相手の行動がちぐはぐになったからです。

その理由はいたって簡単です。戦闘に参加していない多くのプレイヤーから「応援」されてログが流れまくったのですから、つぎにパーティの誰がどう動くかを事前に知ることができなくなっていました。行動を見てから反応して最善の手を打ってはいましたが、事前に分かっているのとでは比較になりません。

壁役のひとりが倒れ、もうひとりも倒せばこちらの勝ちもあるなぁとは思いましたが、テストとしてはこれで十分だったので、そこで勝負は終了させました。セコい手で負けた、というマイナス感情も残したくなかったですしね。

チャットフィルターを知らないことが発端

さてこのログ流し、悪意のあるメールは禁止という利用規約に反しているかが問題です。ここで悪い言葉や意味不明の文を送りつければもちろんそれに該当しますが、今回は「応援」ということで言い逃れする余地は残しておきました。

もっとも、当事はまだ若かったゆえそんな屁理屈をこねているだけで、もし今なら絶対にそんなことはしません。あくまで若気の至りと考えていただければ……。

それはともかく、この策をどうするかが議題となりました。効果はそれなりにあるが、使えば運営に通報は行くでしょうから使えるのは1回かぎり。相手の主要メンバーの名前は分かっているし、アバターで判別も付くが本当にやるのか……などです。

結局「戦争開始後にもしワラにもすがる思いで何かしなければいけなくなったらやってみる」という形で決着しました。まあ、こんなセコい手を使わずに勝てるようがんばろうと結束できたのは予想外の効果でしたが(笑)。

ちなみになぜこんなことを思いついたかといえば、それは初めて一般サーバーでプレイした際の体験でした。このゲームではチャットフィルターを設定して不要な情報はカットするのがお約束ですが、私はテストサーバーでしかプレイしていなかったのでそんなことは知らなかったのです。

プレイヤー同士の会話や店を出しているプレイヤーの呼び込み、自慢のショートカットワードの披露をしているプレイヤーなどすべてのログが流れ、驚いたものです。「ここの人たちマジでどういう動体視力してるの?」と、本気で考えたりもしました。

なにしろ、前回お話したように私にとってこの世界は誰かの会話が流れることすらまれだったのですから、猛烈な速度で流れていくログに衝撃を受けたことを策として利用できないかと思った次第です。いや、本当に若かったなあ……。

そんなこんなで準備期間も終わり、ついに戦争が開始されます。この「連携を妨害できればいいなあ」という程度のささやかな「策」が、とんでもない結果を招きました。それについては次回にお話しますね。

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著者プロフィール

台風一家ゲームライター
ゲームを始めて、はや○十年となりました。小さいころはロボアニメをよく見ていたせいか、ライターになってもロボにやたら縁があります。「誰かの成功から学ぶ」ためでなく「誰かの失敗を繰り返さない」ために歴史を学んでいましたが、あまりその教訓は生かされていない気がしますね。