第4回 実作業が始まったら企画屋は何をするのか

仕様書ができ、プログラマーさんやデザイナーさんと打ち合わせが済んだらいよいよ本格的にゲーム制作の開始です。プログラマーさんは各種素材がそろうまでに基本システムや描画エンジンの作成、データベース構築、ライブラリ検証やらシェーダー作成などを進め、デザイナーさんはキャラクターや背景、ゲーム中で使われるボタンやアイコンなどの素材作成に奔走します。

そんななか、仕様書を書き上げて一段落しているのが企画屋……のはずなんですが、だまって出来上がってくるのを待っているというわけにはいかず、以下のようなことが起きます。

・仕様書のとおりに作っていたら問題が起きた。
→すぐさま問題を解決するための別案や回避策を講じなければなりません。
・実装する時にテストデータ、テスト用素材が必要になった。
→デザイナーさんの手を借りるほどのデータではないので企画屋が作らねば。
・クライアント(※1)からの要望で新機能を入れなければならなくなった。
→すぐさま今の仕様に載せられるか検証後、仕様書を修正しなければ。
・ある程度出来上がってきたら何かつまんない。
→大変だ! 面白くしなければ!

などなど。全部が全部かならず起きるような問題ではないのですが、少なくとも仕様書が出来上がったからといって、企画屋が椅子に座ってボーっとしていていい訳ではありませんし、むしろここからが本番なので他業種の方々と連携を取って作業していかなければなりません。

作業は続くよ、どこまでも

仕様書の問題が解決した、テストデータも作った、クライアントからの要望にもできるだけ対応した……という状況になると、つぎなる作業がプログラマーさんから降ってきます。

「出来上がってきたゲームシステムを使って、敵の強さの設定や配置などをやって欲しい」

と。ゲームのルールやシステムが出来上がってきたのに、敵がいなかったり、適当に配置されただけの敵と戦っても面白くありません。なので、遊んでくれるユーザーが飽きないように敵を配置したり、ある程度ゲームに慣れて単調になりがちな部分に少し強めの敵を出したり、今までのやり方では先に進めないような仕掛けを配置したり……と、ゲームが面白くなるような要因を作っていきます。

この作業を「レベルデザイン」と呼称します。レベルデザインには敵の強さや配置だけではなく、敵を倒したときに得られる報酬や、プレイヤーを強くするためのアイテム設定なども含まれます。

1ステージや2ステージ程度の規模の小さなゲームならばそんなに時間がかからないのですが、RPGのようなクリアまで何時間も要するようなゲームの場合、最初の旅立ちの村から最後の悪の親玉が潜む城までに出てくる敵の数は尋常ではないぐらいの種類があるので、ものすっごい時間がかかりますし、正直ひとりで作業をしていたら、いくら時間があっても終わりません。

ではどうするか。助っ人を頼みます。

スクリプターというプロがいる

スクリプターとは「スクリプトを打つ人」のことです。では、スクリプトとは? 簡単に言ってしまうと開発者が意図したとおりにゲームが進むようにする命令書です。

【Aという人に話しかけたら「こんにちは」という言葉を返す】という命令を記述したモノがスクリプトで、ゲームはこれにしたがって進むようになっています。町の入り口に立っている人なら「ここは○○という町です」という台詞だけで構わないのですが、話しかけるごとに台詞が変わったり、別の町に行って帰ってきたら別の台詞に変更しなければならないという場合、そういった命令をすべて記載しなければなりません。

当然、まちがいは許されません(※2)し、面白くするためにはかなり複雑な作りになることが多いので、企画屋のように問題が起きたらそっちの対処をしたり、仕様書修正や打ち合わせなどでスクリプト作業に時間が取れないor取りにくいような場合、命令書を作る作業を専任でやってもらうスクリプターさんをチームに迎え入れます。

このスクリプターさん、ゲーム業界的には結構軽んじられている(と私は感じている)のですが、ゲーム作りではじつは「要(かなめ)」とも言える重要な役割を果たす職種なんですよね。

単純な命令をまちがえないようにすべてのシーンに入れたり、前のシーンとつぎのシーンでキャラクターの動きや位置関係がおかしくなっていないかを確認しつつ、なおかつ選択肢ごとに台詞が変わるだけの部分でもいちいちすべて作らなければならなかったり……と、ちょっと考えただけで面倒&根気がいる職種です。しかも、スクリプトを打つのに指示書が適当だったりする場合も多いのでその苦労たるや……。

ニワトリではさめ?

スクリプターさんには仕様書とは別にスクリプト指示書のようなモノが必要です。アクションゲームのようなステージ数などが少ないジャンルでは企画屋が指示書を作ったりしますが、RPGのような壮大なシナリオや山のようなイベントがあるようなジャンルの場合、シナリオライターさんやイベントチームから指示書が出ることになります。

優秀なシナリオライターさんだとフラグ(※3)管理やキャラのこまかい動きや演技プランまで明瞭に指示書に書かれているので、そのとおりに作っていけば何の問題もないのですが、困ったちゃん(前回記事参照)が指示書を作るとかなりマズいことになります。

以前関わったプロジェクトのシナリオライターがかなり残念無念の困ったちゃんでして、以下のようなことが起きました。

スクリプターさん(以後、ス):「風来の企画屋さん、ちょっといいですか?」
風来の企画屋(以後、風):「ん、どしたの?」
ス:「とある町の指示書が来たんですが、どうしたらいいか」
風:「指示書どおりに作ればいいんじゃないの? 何か問題?」
ス:「う~ん、問題というか……」
風:「???」

何とも煮え切らない受け答えをするので指示書を見てみると……。

町人「○○の村へようこそ」
※ニワトリなどを配置して町人の左右から話しかけられないようにして下さい。
ニワトリ「コケッ!」

風:「なんだこれ?」
ス:「町人の台詞は正面からのみ話しかけられるようにして欲しいみたいなんです」(必死で笑いをこらえている)
風:「だから左右にニワトリ置けって?」(大笑いしそうなのをこらえる)
ス:「はい」
風:「指示書どおりにしないとシナリオライターさんの意図どおりにならないからなぁ……」
ス:「わかりました。それじゃあ指示どおりに作ってみますね」

00
上図のように、話しかけられた方へ町人が向きを変えて台詞を喋るようにするのは向きの指定を追加するだけで終わるのですが、シナリオライター様は手間がかかると勘ちがいしたのか【左右からはプレイヤーが話しかけられないようにニワトリで挟んで回避しろ】という指示を出したようです。アホやろ……。

ス:「作ってみました!」
風:「お! 見せて」

01
ス&風:「……」(涙目になりながら笑いをこらえる)
ス:「これ、問題があって……」
風:(そりゃそうだろw)
ス:「ニワトリも左右から話しかけられちゃうんですよね」
風:(そっちかよwww!)
ス:「どうしましょうか?」
風:「左右から話しかけられないように……ニワトリ置けよ」(爆笑するのを抑えるので必死)
ス:「あ! なるほど! 指示書どおりですね」(腹抱えている)

数分後……。

ス:「できました!」

02

ス&風:「ワハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

風:「あ~、笑った笑った。面白かったから直しておいてね!」
ス:「ういっす!」

さらに数分後、上下左右どこから話しかけても大丈夫なようにスクリプトが組まれてそのシーンのデータは完成しました。さすがに町の人全員が周りにニワトリ引き連れているRPGなんて見たことないですし、だいたいニワトリにはばまれて奥に行けなくなってるし(笑)。

脱線しました。

このように、スクリプターさんというのは、冗談を言いながらもしっかりとこまかい部分までおかしくないようにデータを作成し、確実にゲームを完成に近づけていってくれる人たちなんです。この人たちと協力し、企画屋は膨大な数のデータを少しずつ完成させていきます。そして、ほぼひととおりのデータが出来上がると今度は恐怖の「デバッグ」が始まります。

長くなりましたので、デバッグについては次回にしましょうか。今回もここまでお付き合いいただきましてありがとうございました。

【用語解説】

※1……クライアント様:ゲーム制作を依頼してきた一番偉い方or会社様。ここに逆らうとあまりいいことは起きないばかりか、つぎのゲームを作らせてもらえなかったりするため、逆らわない人が多い。そのせいか、結構な勢いで無茶を言ってくる場合がある。あたし? あたしゃ理不尽な要望にはクライアント様だろうが何だろうが逆らいますよ。
クライアント様:「ほかのゲームでこんなことやってたからうちのゲームでも入れといてね」
私:「了解しましたぁ!」(皆:「逆らわないんかい!」)

※2……まちがいは許されません:選択肢Aを選んでいるのにBの方へ進んだ。倒しちゃいけない敵を倒せてしまった。武器が買った値段よりも100倍高く売れた。たまにこういうことが起きますが、これはチェックと管理体制の甘さが招いた結果です。
「いいゲーム ひとつのミスで クソゲーに」
気を付けたいと思います。

※3……フラグ:「寝坊した朝、食パンをくわえたまま家を出る」とフラグが立った状態となり、「道路の角で可愛らしい女性とぶつかる」という現象を引き起こします。つまり、何かの引き金になるような要因をフラグと呼びます。逆に「生きて帰るから味噌汁作って待ってろよ」と言って、さも死ぬような流れを見せておきながら本当に生きて帰ってくることをフラグクラッシャーと言います。現実世界でもフラグが立っているのに気づいておらず、もったいないことになっている人が多いようです。

(文・風来の企画屋)

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著者プロフィール

風来の企画屋ゲームプランナー
中古ファミコン屋店長からスタートし、プログラマーを経てゲーム企画屋に。ディレクターも頼まれればやるし、プロデューサー経験もあるが「やっぱり企画が面白い!」と企画に固執いているオッサン。来年発売のダライアスをPS4版でやろうかVita版でやろうか悩み中。