第7回 『ライデンファイターズ2』とセイブ開発退職の経緯!

今回は『ライデンファイターズ2(以下、RF2)』のお話で、セイブ開発在籍時の話もこれが最後。『RF2』の開発完了後、セイブ開発を退職することになります。今回はどっちかと言うとこっちの話がメインかも。

『ライデンファイターズ2』楽曲制作のお話

まずは『RF2』の楽曲開発の話から。『RF2』は完全にキープコンセプトで、とくに初代とくらべて大きく変更した点などはなし。むしろ、前回苦戦したテクノ系の楽曲もある程度経験を積めたので、『RF2』ではもっと積極的に作っていくことができ、初代よりもこなれた作品になったと思ってます。とは言っても、もう完全に克服したというほどのものではなく、なんとか求められるレベルのものを形にできるくらいにはなれたかな、って感じ。

作風はキープコンセプトで目新たしいことはほぼしなかったけど、ひとつだけ、面白いかなと思って仕掛けたのが、ネームエントリーの曲を、オールクリアしたときのスタッフロール曲の一部をアレンジしたショート版にしたこと。

ネームエントリーの曲は、やりこんでいる人ならそこそこ聴いてきてるだろうから、オールクリアしてスタッフロール曲が流れたときに「あ、ネームエントリーの曲ってこの曲の一部だったんだ!」と気づいてもらえればという感じで仕込んでみました。実際、そこそこではあるけれどもそういう意見を聴くこともでき、微々たるものながら演出としての面白さや話題のネタにはなれたんじゃないかなと思ってます。

そして、スタッフロール曲の作曲がセイブ開発での最後の作曲。なんだかんだで7年近く在籍して、初めての会社でもあったんで、いろいろ感慨深いものがありました。こうして『RF2』の開発完了を見届けて、7年近く勤めたセイブ開発を退職することに。

セイブ開発退職の理由

セイブ開発を退職した理由はいくつかあります。一番の理由としては、高度な楽曲を作曲するためのスキルを身につけることができるような企業に転職する必要性を感じた、というもの。

このころはプレイステーションやセガサターンが発売されていて、カプコンの『バイオハザード』、セガの『サクラ大戦』、スクウェア(当時)の『ファイナルファンタジーVII』など、ゲーム開発が一気に高度化し、ハイクオリティーなゲームがどんどん生み出されていった時期でもありました。

当然サウンドも今までとはちがう、もはや映画音楽だったり、アニメやCMなどの音楽と遜色ないものが当たり前になりつつあって、
「『バイオハザード』のような映画音楽テイストの曲が自分に作れるだろうか?」
「『サクラ大戦』のような歌モノが作れるだろうか?」
「『ファイナルファンタジーVII』のような壮大かつ背景や感情を表現する楽曲が作れるだろうか?」
って考えたときに、まあどう考えても無理なわけですよ。少なくともそういう音楽を聴いてきてもいないし、ましてや作ったこと、研究&分析もしたこともないので、作れると思ってる方がおかしい。

当時、そもそも歌モノやオーケストラ、アニメの劇伴のスキルとゲームサウンドとは完全に別スキルで別世界だと思っていたから、自分には必要ないと思ってたんだよね。実際昔は完全に住み分けていていたので別世界だったんだけど。

むしろ、このころ追及していたのはFM音源などの音源研究や、データの打ち込み方法とかで、そういうサウンドの世界がそのまま発展していくんだろうなと思っていました。今だと笑い話にできるレベルだけど「FM+PCMのハイブリッド音源で同時発音256音の音源チップが登場する」とか「16オペレータのFM音源が登場する」とか、そんな未来像を当時は期待してたんですね(笑)。

これまでは、自分が好きな往年のゲーム音楽=市場に求められている音楽であったから、好きなことをやっていればおのずと受け入れられて、支持されてきていたけど、しだいにそれが通用しなくなる時代が来ることが感じ取れた。セイブ開発でそんな次世代のサウンドが手掛けられればよかったけど、当時そうなれるとは思っていなかったんだよね。

もうひとつの理由は、ずっとサウンドは自分ひとりで同僚も先輩もいなかったので、もっと情報交換したり、切磋琢磨できる相手が欲しかったというのもあった。初代『ライデンファイターズ』のテクノで苦戦したのは前回話したと思うけど、そういうときに同じサウンドの仲間がいたら、またちがってたのかもなと。

なので、セイブ開発に何か不満があったとかいうことではなく、今後自分が必要と思うことを成し遂げるためには、転職しかないって判断した結果なんだよね。退職後もちょいちょいセイブ開発には顔を出しに行ったり、転職先が決まったときに報告しに行ったりしてました。なんだかんだで未経験だった自分を拾ってくれた、プロになるきっかけをくれた会社だったから色々恩もあるわけで。ちなみにセイブ開発の濱田社長とは未だに付き合いがあります! 電話で話したり、たまに会うこともあるぐらい。

セイブ開発での仕事は「佐藤 豪」の第一期!

そんな感じで、自分ではセイブ開発でのサウンドクリエイターとしての時代は第一期としてとらえてます。前述の通り、セイブ開発を離れてからは自分の好みや理想は捨て、普通の作曲者として通用するような存在になるために進んでいくことになります。オーケストラや歌モノも作れ、ゲームはもちろん、映画やアニメ、CMでも通用するくらいになれるために。

ただ誤解のないようにしてもらいたいのは、昔のゲーム音楽を捨て、否定しているわけじゃないんです。相変わらず昔のゲーム音楽が好きです。ただ、仕事としてつづけていくには、ほかに課題がたくさんできてしまったので、それらを優先して経験していかなくてはならなかったというだけのこと。これらの経験は昔のゲームサウンド的なものをいつか作る機会があったときに、何かしらプラスにもなるわけだし。

ちなみに現在の話をちょっとすると、現在求められているスキルは、セイブ開発を離れた当時に予想したとおりとなっています。ゲームのサウンド制作も昔と変わらず行ってきてる一方で、歌モノもこれまで何度も作ってきてるし、フルアニメーションのプロモーションムービーへのサウンド制作もしたり、実際作ったものがTV-CMで放映されるようにもなってきています。ほかには舞台の劇中BGMも作ったり、著名な声優やタレントを呼んでくるから、音声収録してくれという依頼も定期的にあるので、自分でマイク立てて、ディレクションして収録したりもしています。

セイブ開発退職当時の判断はまちがっていなかった、たびたび過去を思い出してそう感じています。もし、世の中の変化にこのとき気付けてなかったら、たぶん今、サウンドクリエイターをつづけられてなかったと思う。

そして残念ながらこれも予想どおり、すっかり昔のゲーム音楽的なサウンドを求められることも減りました(最近1件あった!)。なので、知ってる人も多いと思うけど、昔のゲーム音楽のよさを後世にも伝えたい、当時を知らない若い世代の人たちにも知ってもらいたいという気持ちから、現在は、昔のゲーム音楽を演奏するバンドを結成して、定期的にライブ活動を行っています。

昔の良さを知ってもらうための活動、現在必要とされるレベルのサウンド制作の活動、このふたつの活動を継続していくことが、今の自分の使命だと思っています。

とくにバンドは、基本的には『雷電』や『バイパーフェイズ1』など、自分が過去に制作したものを演奏してるんだけど、だんだん欲が出てきて、最近はまったく関係のない他社のゲーム音楽も演奏するようになってきました。これが、もっと幅広い意味で昔のゲーム音楽の良さを世に広めるきっかけになったらいいな!

ということで、今は当時とは全然ちがった世のなかになってしまっているけど、そのなかでやっていくことも楽しんでいくこともできるし、今後も新旧どちらも力を入れてがんばっていきたいです!

(文・佐藤 豪)

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著者プロフィール

佐藤 豪
佐藤 豪サウンドクリエイター
ゲームサウンドクリエイター。気が付いたら24年この仕事やってます。作曲はもちろん、効果音が好きで効果音の研究に取り組んでいます。代表曲は『雷電II』『バイパーフェイズ1』『チョコットランド』など。

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