第10回 ゲームミュージックの今昔、制作環境の今昔

こんばんは! 佐藤豪です。すっかり秋で今年も気が付けばあと2ヶ月。早い! 本当に早い。だんだんと寒くなってきて、麦茶の作り置きもそろそろ止めて、コーヒーメーカーや急須の出番かなと思ってます。

前振りはこのくらいにして本題。今回はゲームミュージックの移り変わりについてお話しをしていきます!

ゲームミュージックの定義とは!

「ゲームミュージック」の定義ってなんだろう? かつてはゲームミュージックと言えば、PSG音源やFM音源、ロービットなPCM音源など、電子音で構成された独特のサウンドを用いてゲームに使われる音楽の事を指していました。今でも「ゲームミュージックとは何?」って質問したら、「ピコピコした音楽でしょ」って言う人もまだ多いと思います。

世の人は長らくゲームの歴史とともに歩んできたからそういう印象を引きずっているけど、でもじつは現代では全然ピコピコしてないわけで。ハードの性能も上がってるし、作り手のレベルも上がってるし、今のゲームミュージックってとっくに映画やアニメ、CMなどと同じように普通の音楽と比較しても遜色ないものになっており、現代のゲームミュージックの定義は、「単にゲームに使用されている音楽」となってしまった。

それほどまでに定義が変わるくらい、ゲームのハードはこの数十年でかなり進化をし、それにともない制作手法も変わってきました。そのゲームミュージックが今と昔でどうちがうのかをお話ししましょう。

昔のゲームミュージックのお話

昔はPSG音源、FM音源、PCM音源(以下、音源チップ)などを制御し、コンピュータ内の音符データを読み込ませて再生するのが一般的でした。一応は内部で自動演奏してると言えるので、なんとなくだけどCDを流してるだけとはちがった味わいを感じることができた(ような気がした)ものです。

音源チップには、同時発音数という性能の限界があり、音をむやみに自由にたくさん重ねていけるわけではありません。同時発音数はチップによっていろいろちがうけど、一番代表的だったYM2151というFM音源チップを例に出すと、同時発音数は8音。これは音楽に使える数ではなく、効果音も含めてのすべての総数。『雷電II』で使用したときはBGMに5音、効果音に3音と使い分けていた。かなり少ないよね。まあファミコンはもっと少なかったから、ぜいたくいえなかったけど。

でも、少ないからと言って、みんなが指をくわえているわけではなかった! メーカーによって取り組み方はさまざまだけど、あくまで例え話で言えばBGMはとりあえず8音で作っておいて再生し、効果音の再生が必要な時だけBGMの一部分を消して効果音を割り込ませて再生し、効果音の発音終わったら再び途中から、もとのBGM再生に戻る……なんてことをプログラム的に実現させ、音源チップの性能限界をおぎなうなど工夫してきた。ちなみに『雷電II』はそんなプログラム制御ができなかったので、かなり素のままでした(涙)。

ほかにも、みんな少しでも良く聴こえさせたいがために、さまざまな工夫をしたり、技術を編み出してきました。代表的なのが「擬似ディレイ」。ディレイというのはエフェクト機能のひとつで、カラオケのエコーのような効果ととりあえず思ってもらえれば。ギターやシンセサイザーなど、現代の音響機器にはだいたい付いてる機能です。しかし当時はエフェクト機能がなかった時代なので、これを音符データだけで擬似的に再現しようと。

ディレイと言うのは例えば、山頂で「ヤッホー!」と叫ぶと、その後小さく「ヤッホー、ヤッホー……」と繰り返される(今でも言う人いるんだろうかw)、もとの音が遅れて何度か繰り返し発音されるあの現象。つまり、メロディパートを作ったら、同じデータを別チャンネルにコピーし、もとのメロディパートよりも小さい音量で、データの先頭に休符を入れて少し遅らせて再生することで再現した。

このような職人技のような細かいこだわりと作りこみを、各クリエーターはスキルを競いあうかのようにつぎつぎと生み出して行き、素で作るよりも数倍も聴こえの良い音楽が生まれ、独自の世界観を確立していった。俺もこの仕事を選んだ動機が、そういう独自の世界観にあこがれて影響されたからなんだよね。

ゲームミュージックはこう変わった!

では、今はどうだろう? 現在はWAVファイルのようなオーディオファイルをゲームの進行に合わせて再生する形が主流となっている。くわしくない人にイメージとして説明すると、ゲームの進行に合わせてiTunesでmp3を再生するのを、プログラム的に行なってるようものだと思ってもらえればいいかも(かなり乱暴な例ではあるが^^;)。

ひと昔前(ふた昔前?)ではCD-DAでCDから再生することもあった。俺は音源チップを制御して音楽を鳴らすのに魅了されたわけで、最初はこの再生方式が登場したときはかなり否定的だったっけ。
「音源チップから自動演奏されるからこそ、ゲームミュージックじゃん!」
しばらくはそう思っていたけど、世の中の流れは確実にこちらに向かっていき、そして完全に定着した。俺も流石に、今は何の疑問も持たずに受け入れています。

この方式の最大の利点は、録音した音楽をファイルやCDで再生するだけだから、生のオーケストラだろうが、歌のある音楽だろうが、どんな音楽でも使うことが可能なところだ。つまり、映画やアニメ、CMなどと同じクオリティのものを作って再生することもまったく問題なくできるわけである。

当然、制作機材も映画音楽などを手掛けている人と同じでよいわけで、今や音楽制作を仕事にしている人は、映画でもアニメでもJ-POPでもパチンコでも、みんな同じ環境になってしまった。

それでも機材やソフトはそれなりに高額なものが多く、みんながみんな横並びで同じものを使えるわけでもなかったが、ここ数年で機材やソフトウェアの価格が下がったこともあり、今ではプロだけではなく、専門学生や同人活動や趣味で制作している人でさえ同じになってしまった。

それだけではなく、最近では生演奏を収録して制作することも珍しくなくなってきている。ゲーム制作秘話的な雑誌のインタビュー記事などでも、サウンドクリエイターが演奏収録時の話をしながら、スタジオの収録の模様の画像が添えてあるということも、今では普通に見かけます。

じつは俺も今、演奏とレコーディングというところに一生懸命取り組んでいます。打ち込みはもはやさんざんやってきているし、今後やらなくなることはないと思うけど、まったく経験のなかった生演奏を取り入れるということは自分にとって新しいことで、自分の幅が広がっていくと思ってるんだよね。

打ち込みも演奏収録もできれば、制作をしようと思ったときに選択肢が広がるわけで。予算や期間があれば、じゃあ生演奏でやろう!って出来るし、予算がなければDTMでやればいいだけのことで。もうここまでくると、本当に普通のミュージシャンやアーティストとやっていることは何も変わらない。

それにしても自分がこのような手法で制作するとは、昔はまったく予想すらしなかった。もともと音源チップを駆使した音楽がやりたくて始めたのにね。まあ、やりたいことと世の中に求められてることって今はちがうし、生きて行くための手段にサウンドクリエイターを選んでしまったので、好きなことだけやってれば良いわけではないので、仕方がないと思ってる。まあ、これはこれで面白かったりもしてるしね。

 

……こんな感じで昔と現在を比較しながら話してきましたが、いかがだったでしょうか? 昔ながらの作風のゲームミュージックが新しく生まれることはなくなったけど、今では昔のゲームミュージックは文化と言えると思うし、昔のゲームミュージックを語り継ぐのも、それはそれで面白いんじゃないかなと個人的に思ってます。

 

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著者プロフィール

佐藤 豪
佐藤 豪サウンドクリエイター
ゲームサウンドクリエイター。気が付いたら24年この仕事やってます。作曲はもちろん、効果音が好きで効果音の研究に取り組んでいます。代表曲は『雷電II』『バイパーフェイズ1』『チョコットランド』など。

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