第11回 効果音のお仕事!

どうも、佐藤豪です。最近ライブがつづいたり、本業がいそがしかったりで更新遅れました。すいません><

しかし2015年はあっという間だった。ライブなどバンド活動に明け暮れた一年でした。本当は自分は効果音強化の年にしたかったんだよね。いろいろな音をたくさん録音したり、さまざまな場所に行って収録したりして、自分だけのライブラリーを作りたくて。

なので、2016年こそは効果音の年に……とは思っているけど、どうやらまだまだバンドイヤーはつづきそう。両立できると良いのだけど。ということで、今回はその効果音についてお話したいと思います!

「効果音」はどうやって作る?

さて、効果音ってどうやって作られているか知ってますか? たまにテレビ番組でも効果音のメイキングについて取り上げられてるし、今はネットで調べればある程度情報が得られるので、多くの人が映画などの音は後付けの作り物だということを知ってるんじゃないかな?

一番有名なのは、小豆を籠に入れて傾けたときにザーッと鳴る音で波の音を作る方法だと思いますが、効果音はさまざまなものがあり、その他のいろいろな作り方を知っている人は少ないんじゃないかと思います。

もし、効果音を作ったことのない人が初めて作ってみようと思ったときに、どうしたらいいのか? 作曲ならば音楽理論というものがあり、作り方の手順が、本やネットを探せばたくさん出てくるので、ひととおり学べばなんとなく糸口はつかめることでしょう。

しかし、効果音は理論などが確立していないため、作ったことない人が作ろうとしても何から始めてよいか、また、何から学び始めたらよいかがわからなかったりします。

では、われわれプロはどうしているのか? じつはプロのあいだでも、効果音の作り方ってよくわかってなくて苦労していたり、なんとなく手探りで作ってみるものの、本当にこの作り方でいいのかな? と、悩んでたりします。

よく業界内のイベントや懇親会などの集まりがあったときに、ほかのサウンドクリエイターの方々と「効果音ってぶっちゃけどうやって作ってる?」なんて話題になったりします。それくらい効果音の作り方はマニュアルのようなものが存在しないんです。強いて言うなら、イコライザーを始めとしたエフェクターなど音響的な知識や考え方が唯一役に立つかもしれません。

ということで、ここでは自分の効果音の作り方や考え方を紹介したいと思います。自分の場合は、「現実の音(以下、生音)を加工して作る」という考え方が土台となっています。それではおぎなえないときに、初めてシンセサイザー(以下、シンセ)も使います。人によってはシンセで作ることを基本としている方もいるので、手法は個人ごとで本当にさまざまですね。

掃除機の音がジェットエンジンの音に!

昔、効果音を一生懸命研究した時期があったんだけど、そのときに出会った本があります。

「音を作る TV・映画の音の秘密/木村 哲人 著(筑摩書房)」
「音作り半世紀 ラジオ・テレビの音響効果/大和 定次 著(春秋社)」

どちらもラジオしかない時代から、音響効果一筋で作りつづけてこられた方々の本です。まだオーディオ編集ソフトウェアが登場するはるか前の時代、録音機器といえばオープンリールくらいしかなかった時代に、いろいろな工夫や知恵を凝らして作り上げてきたノウハウをひとつひとつ紹介している貴重な本で、自分のバイブルになっています。

効果音をガチで作ってきた人が説明してくれている本なんてそうそうないし、これらは本当に貴重な存在です。一番印象的だったのは、ジェット機や宇宙船の音を掃除機で作るという話。

掃除機の音を録音して、再生速度を遅くすると迫力のあるジェットエンジンっぽくなるというので、早速試してみることに! 掃除機はたいていは一家に1台あるから手軽に試せるわけで、これはやらないわけにはいかない。

このときすでにオーディオ編集ソフトは存在していて、そのソフトで再生速度を遅くすることはできたんだけどあえて使わず、かといってオープンリールを手に入れるのも大変だったので、オープンリールと構造的にもっとも近い、カセットテープのMTRで試してみました。

所有していたMTRはテープの再生速度がプラスマイナス1オクターブくらいの可変ができるので、掃除機の音を録音したあと、再生速度を1オクターブ下げて再生。するとじつに迫力があり、ひとりで「スゲー!」って騒いでいました(笑)。

ほかにも人を斬る音、剣を振る音などといったものも作り方が具体的に書いてあるので、これで多くを学び、生音を加工して作る手法が自分の制作スタイルの土台となりました。

効果音の素材集を使う

ただ、「じゃあお前はいつも何かしらを録音して加工しているのか?」って言われるとそういうことでもありません。残念ながら、これをまともにやっていると相当な時間を要するので、実際は、市販の「効果音CD」という便利なライブラリーをメインに使いつつ、CDだけではまかなえない場合や、とくにこだわりを持って作りたいときには録音して作るといった感じでやっています(ちなみに今担当してるタイトルは、8割方はCDを使わず自分で録音して作っています!)。

この「効果音CD」はさまざまなメーカーから色んな種類のものが出ているんだけれど、もっともポピュラーなのは「SOUND IDEAS」と「HOLLYWOOD EDGE」と呼ばれるシリーズ。どちらも海外製で、数十枚組のCDから構成され、たくさんの効果音素材が収録されているので、たいていの音ネタはこれで探せば入っていたりします。

多分、ほとんどのゲームサウンドクリエイターがこのライブラリーを使ってきているはず。ゲーム業界だけではなくアニメやテレビ番組でも使われていて、さんざんこのCDを聴いてきている僕らがアニメやテレビを観ていると「あ、この効果音はあれやんけ!」ってわかってしまうくらい世に浸透しているポピュラーな素材集です。

これらは今でも現役で使われてつづけているけれど、どちらも発売されてから大体20年くらい経っているので、さすがに今の時代では音の解像度が低かったりしてちょっと物足りない感じです。

前述したような再生速度を遅くする加工をしたら、音がデジタル特有のビットの粗いガビガビな音になってしまったりと使いにくいのが正直なところで、最近は使用頻度は最小限にしています。では、最新の効果音素材を買えばいいのでは? と思うかもしれませんが、近年は効果音CDは発売タイトルが少なく、なかなか世代交代できていないのが現状です。

シンセサイザーで効果音を作る!

制作時は当然シンセも使います。とくにシューティングゲームとかのビームやレーザー発射の音というものは、シンセなくしては作れないです。個人的に一番使ってきたのが、「Clavia Nord Lead」と「Roland JP-8000」。

いわゆるアナログシンセというやつで(まあこの2機種はデジタルモデリングだけど)、レーザー音とかに向いている「エグい」音が出る。「Nord Lead」はテクノ系アーティストをはじめ、さまざまなミュージシャンに支持されたシンセであり、「Roland JP-8000」は、トランスというジャンルを象徴する音色のシンセとして有名なもの。自分は両方とも効果音のためにだけに買っていて、どちらも作った音を本体に保存できるんだけど、ほぼ自分の作った効果音しか保存してないです(笑)。

唯一「Nord Lead」は過去に『RAIDEN FIGHTERS』の楽曲で使用したことがあるくらい。「JP-8000」に関しては一度も楽曲に使ったことがない……。でも、どちらもシューティングやロボット系でも作ることがないかぎり出番もなく、最近、パズルゲームの効果音を作るときなどはソフトシンセをメインでやっていました。

どう見ても不審者!? 録音現場での苦労

効果音制作におけるエピソードをいくつか。昔、水たまりの上にいる魚にとびかかってつかまえるときに、水しぶきが「バシャ!」と勢いよく飛び散る、という音を作ることがありました。効果音CDを探してもそんな水しぶきの音はなくて、同僚と協議の結果、これは録音するしかないな、ということに。

たまたま職場は海のすぐ近くだったので、バケツとマイクとレコーダーを持って早速海へ。しかし海に到着すると、防波堤に柵が張ってあるような場所しかなく、バケツで水をくむことができなかった。

さてどうしようとあたりを見渡すと公衆トイレがあったので、そのトイレで行なうことに。ひとりがトイレの蛇口で水をくみ、床に勢いよく叩きつけ、もうひとりがマイクを構える。するとふたりとも足元から水浸し。だがもう始めてしまったので後には引けず、計7~8回ぐらいそれをつづけた。

まあ、これくらい録れば何とかなるだろうということでトイレを出たんだけど、直後に犬を散歩させてる年配の女性がこちらを不審そうに見ながら横切った。公衆トイレは会社の近場だったということもあり、マイクとレコーダーはバッグにも入れずむき出しで手に持っている状況。瞬間、「俺らどう考えても、トイレの盗聴とかそういう不審者にしか見えないやんけ!!!!」ということに気が付いて、職場に逃げるように戻っていった。足元をわんぱくな子供のようにびしょびしょに濡らしたまま(笑)。

まあ、通報されたり職務質問されたりするようなこともなく、苦労した甲斐あって、効果音も無事いい音を作ることができました。

エピソードをもうひとつ。これは自分の体験談ではなく、職場の人の話。野球ゲームの効果音を担当していた彼は、観客席の金網にボールがぶつかったときの音を作るのに、ボールと録音機器を持って周辺の駐車場に行ったそうな。

駐車場は金網で囲われているので、そこにひたすら何度もボールをぶつけて録音していたところ、しばらくして警察が「何してるの?」と職務質問をしてきた。どうやら見かけた人が通報したらしい。

身分証明してキチンと目的を説明したら、不審者ではないことを理解してもらえたみたいだけど、ひたすら金網にボールを繰り返し投げつづけてる人を街中で見かけたら、いくら俺でも軽くヤバイ人に見えてしまっただろう(笑)。このように、野外での録音は、いつでも不審者と間違われる可能性との戦いであります(笑)。

 

……というわけで、なんとなくだけど効果音について語ってみました。人にこういう話するの初めてかも。ゲームサウンドというと音楽ばかりが注目されがちだけど、効果音もとても重要な役割を果たします。

コントローラーのボタンを押す行為はどんなゲームでも一緒だけど、結果、星ひとつが吹っ飛ぶようなすさまじいレーザーを発射したり、一撃必殺のパンチを敵に食らわせて爽快な気分になれるのは、クリエイターが苦労して一生懸命作った効果音があるからこそ成り立ちます。

ゲームをプレイして「この効果音気持ちいいな!」「よくできてるなぁ」って少しでも思ってもらえたら、嬉しいかぎりです。それではまた次回!

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著者プロフィール

佐藤 豪
佐藤 豪サウンドクリエイター
ゲームサウンドクリエイター。気が付いたら24年この仕事やってます。作曲はもちろん、効果音が好きで効果音の研究に取り組んでいます。代表曲は『雷電II』『バイパーフェイズ1』『チョコットランド』など。

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