第12回 作曲のお仕事!

どうも、佐藤豪です。2016年に入ってからとても仕事がいそがしく、またまた大幅遅れての更新です……。今回は、本来ならば一番最初に語っていてもおかしくなかった「作曲」について。作曲にはいろいろな見かたがあって、どの視点で話したらいいか、なかなかまとまらなくてちょっと見送っていたのですが、やっと定まったので、今回はそのお話をしてみたいと思います。

基本的に、音楽をあまり知らない人でも面白く読んでいただけるようにいつも配慮はしているんですが、もしかすると、ちょっと音楽をやっている人向けになってしまっているかもしれないのが気がかりです……。ともあれ、作曲のお話をしていきましょう!

幅広いジャンルの曲を作曲するために

ゲームに限らずサウンド制作と聞いて真っ先に思いつくのが、作曲の仕事だと思います。サウンドクリエイターを目指す人は、作曲者になりたいと思う人がほとんどなんじゃないかと。自分も80年代のゲームミュージックに影響されて、ゲームの音楽を作りたいというのが動機でした。現代でも多くの人がゲームミュージックに影響されてプロを目指しており、若い人たちの憧れの職業であることは今も変わりはないんじゃないかと。

ゲームの音楽の作曲は、各クリエイターによってスタイルが本当にさまざま。幅広いジャンルをそつなく対応できるスタイルの人もいれば、たくさんのジャンルには対応できないけど、ひとつのジャンルが極まっててそれを強みとして活躍している人もいます(なかには幅が広いのにそのすべてが極まってる、恐ろしい人たちもいるんですが……)。

自分のスタイルは、最初は80年代の流れの影響を受けたゲームミュージック制作でした。独特なこの時代のゲームミュージックに憧れて目指したわけですから、当然と言えば当然。『雷電』シリーズや『バイパーフェイズ1』がその代表だと思うけど、当時はそれが受け入れられ求められていた。でも、年々ゲームのハードが進化するにつれて音の表現力も高まってくると、業界平均レベルがどんどん上がっていき、自分のスタイルは求められなくなってきたと感じたので、ある時を境に方向転換することにしました。

具体的には、「突出したものはないけど幅広いジャンルの音楽を高い平均レベルで作れるようになる作曲者」になろうと思ったんですね。なんか地味な目標だと思うかもしれないですが、実際は結構大層な目標だったりするんです。

きっかけのひとつが、前のコラムでも書いたように『ライデンファイターズ』を担当した時に、作ったこともなければ聴いてもこなかったテクノを求められたとき、思うように作れず身の程を知ったこと。もうひとつはセイブを辞める1年ぐらい前から転職活動を開始して、いろんなメーカーにデモを送っていたんだけど、面接にも呼ばれずデモで落ちまくったこと。

このデモが『バイパーフェイズ1』とかのセイブで作った楽曲だけを収録したものだったんだけど、これじゃダメなんだと思い知らされました。それ以来、勉強の意味でたくさんのジャンルを聴くようになり、作曲もオーケストラ(以下、オケ)など縁すらないと思ってたジャンルを勉強し始め、とにかく普通の音楽を幅広く作れるようになりたいと思うようになりました。

演歌でも昭和歌謡でも、アイドルやビジュアル系だろうが必要と思ったらなんでも聴いてますよ。以前コラムで書いたアニソンもこの流れのひとつ。こうやって、いろんなものに向かい合って受け入れるようにしてきたんだけど、そのおかげか自然と音楽の好き嫌いがなくなりました。それぞれに良さはあるわけだし、すべてにおいて何かしら得るものがあると思ったのでね。

なかでもとくに、シーンの情景描写や心理描写を表す音楽の必要性を感じて勉強してきました。映画やアニメなんてまさにそういった音楽の代表だと思うけど、実際、今は必然的にそういった音楽を作ることが多くなっています。

BGMを作るときに考えていること

ゲーム制作においては、通常は企画者やプロデューサーがいるので、基本的に彼らの求めてるイメージを具現化するのが、僕らサウンドクリエイターの仕事です。このときのやり取りだけでコラムがひとつ書けるくらい色々なエピソードがあるので、今度これに焦点をあててお話したいですね。そこにはいろんなドラマがあり、語ると長すぎてしまうため、ぜひ別の機会に特集したいです(笑)。

彼らと打ち合わせをするときにはまず、こんなゲーム性です、こんな世界観です、というのをヒアリングします。キャラクターがいれば相関図や各キャラの設定など。そうして内容を理解したうえで、つぎはメニュー画面BGMはどうしようとか、ボスの曲はどういうアプローチをしようかなと、自分なりに考えていきます。

ボス戦だったら、強大なボスが現れた恐怖を表したいのか、勇ましく挑む感じがいいのかなど、いろいろな選択肢があります。メニューBGM(セレクトBGM)ならこれから始まる期待感や、(お話的に)これから戦いに挑まなくてはならない緊張感を煽ったり。

また、RPGやアドベンチャーゲームのようなストーリーがしっかりしたものならば、登場人物の不安や苦悩だったり、冒険が始まる壮大感、夜の静けさなど、シーンごとの雰囲気や心理を演出することが大事なので、それをどうやって音楽で適切に表現するか、使う楽器、コード進行などさまざまな観点から考えていきます。

ちなみにコード進行といえば、音楽理論ってセイブ開発をやめるときまで全然知らなかったし、わかろうともしなかったんですよ(笑)。昔は「音楽理論なんて型にははまらないぜ!」って思っていた痛い時期もあったんで。でも、前述のとおり、身の程を知ったときに一通りわかってないとダメだなと思って勉強してきてます。

今でもネットを見ると、音楽理論不要説を唱える人が少なくないけど、経験者として言わせてもらうと必要です。少なくともプロやプロを目指しているのであれば。ただ、誤解しないで欲しいのは、理論の本を熟読して鵜呑みにしても作れるとはかぎらないんです。受験用の英語の勉強をした人が英語を話せるとは限らない、ってのに近いのかも。

話が脱線してしまったのでもとに戻りますが、各シーンにつける音楽の考え方が甘いと、たとえばメニュー画面BGMだったら、イントロは期待感あるけどサビになると「ハッピーエンドかよ!」って思うくらいエンディング感が出てしまったり、ボス曲ならイントロは「強大なボスが現れた!」という始まりかたなのに、サビでもうボスに勝ったかのようなイケイケな曲調になってしまったり。

音楽って1曲のなかで起承転結のストーリー性を表せるので、イントロで始まり感~サビでクライマックス、みたいな構成は珍しくないけど、これではゲームの演出としては失格。メニュー曲ならば「これから楽しい冒険が始まりますよ」という雰囲気を終始持続させる必要があり、ボス曲だと、イントロでもサビでもつねに「強大なボスが現れてますよ」という雰囲気を出しつづける必要があります。

アニメや映画のように、時間の流れや結末が一定であれば、進行に合わせて1曲のなかでそういう変化をつけても問題ないんだけど、ゲームってループ曲が多く、プレイヤーの進行状態で時間や結末は可変するので、1曲のなかでそういう変化をつけてしまうのではよくないんです。

音楽では途中から「あと少しで平和が取り戻せる!」って希望に満ちた雰囲気に変化してるのに、HPがゼロになってゲームオーバーになったら、どう考えてもダメでしょ(笑)? そういうこまかいところに気を使いながら各シーンでの楽曲を組み立てていきます。

またテクニックに走りすぎてもだめだったりします。作曲していると、どうしても少し小難しい感じにしたくてついつい転調しようと思ったり、超絶技巧のフレーズを入れたりしたくなってしまうんだけど、演出として合ってればいいものの、そういうのを安易にやってしまうとシーンの雰囲気を変えてしまったり、バックに徹しないといけないのに、曲の主張が強くなってしまう傾向にあります。

たとえば「今日は楽しい休日のお買い物」みたいなシーンには、爽やかでウキウキした音楽を当てることが多いけど、曲の途中で下手に転調すると、場合によっては突然切ない感じになってしまって、なんだか傷心した人が心をいやすために買い物で発散してるように聴こえてしまう。曲の途中でギターの速弾きソロとか入れてしまうと、もう雰囲気をぶち壊して作曲者のエゴを聴かされるような感じになってしまいます(笑)。作り手としてはその方が面白かったりするんだけど、やはりそこは気持ちを抑えて演出に徹さないといけないんです。

ときには誰でも思いつくようなベタなコード進行で、退屈と思えるようなフレーズをつらぬき通さないといけないのがBGM。そういった細かなところにも気を配りながら作っていきます。

音楽のジャンルについて

ゲームに使用されるジャンルはさまざまだけど、最近はオケ率が高いなと感じています。理由はいろいろあると思うけど、ひとつは最近リリースされるゲームがRPG的な要素や世界観を土台としたゲームが多いからだと考えています。

スマホゲームがとくにそうだけど、パズルゲームやタワーディフェンスゲーム、シミュレーションゲームでRPG的な世界観だったりするものが実際多いですよね。ゲームミュージックはいわゆるBGMに属するものだと思っているけど、同じBGM中心のアニメや映画がそもそもオケ率が高い。オケは状況、心理描写を演出するのに適しているわけで、そういった意味でも必然的にオケ率が高くなってるんだと思います。

実際、ここのところずっとオケを作りつづけてきたので、だいぶ鍛えられました。もちろん勉強をしつづけていて、一時期は積極的にオケのコンサートに行きまくってたりしてたのも大きいと思います。コンサートを観に行っていたときはただ観に行くのではなく、例えば「今日はティンパニが何してるか観たい」というターゲットを定めます。

普通だったらオケのコンサートって、座席は中央の真ん中辺りが一番音響がいいから、みんなそこに座りたがるんだけど、自分らは見向きもせずに、席の最前列のしかも一番ティンパニに近い位置、決して音響的にいいとは言えない場所を陣取ってティンパニをガン観したり。

後ろの観客から見たら、最前列でティンパニだけ凝視している集団ってかなり異質だったんじゃないかと(笑)。そしてコンサートが終わると、「ティンパニって手でミュートしてたな!」と仲間内で語り合ったりして、理解を深めたりしてきました。そんな努力で多少はそれらしく作れるようになったのかなと思っています。まあ、オケを専門的に学んだり得意としてる人には全然かないませんけどね。

ゲームミュージックはかなり幅の広さが求められるので、勿論オケだけできればいいというものではないです。当然ロックやテクノも作れなくてはダメだし、ボサノヴァやアニソンOP的なものを作ってくれと言われることもめずらしくないです。自分も、ずっと『雷電』などのシューティングゲーム系の作曲者としてある程度認知されてきましたが、最近は意外にも歌ものを作ってくれとか、それ以外のジャンルで依頼されることが多かったりしました。

以前、某メイドカフェの経営者と面識ができて、「ゲームサウンドクリエイターです。シューティングとか手掛けてきました」と自己紹介したのですが、「じつはうちのメイドに歌わせるお店のイメージソングを作って欲しいので相談に乗ってください」と言われ、歌ものなんてあんまり作ったことないのに、面白そうだったから「歌ものですね。任せてください」と請けたことがあります(笑)。

歌ものは経験は0ではないにしろ、当時はまだ慣れてないので結構大変でした。歌うメイドさんもすごく歌がうまいわけでもなかったから、彼女らの音域を考慮した上でいいメロディを作らないといけないし、CDとして売り出すとのことだったので、打ち込みや自分の下手糞なギターを入れるわけにもいかず。メロディは音域的なことをはじめいろいろと悩みながらもクリアし、ギターやベースは知り合いづてでガチプロを紹介してもらえたので、なんとか無事に終えることができました。

本当に初めてつづきで大変だったけど、ボーカリストの音域を考慮した作曲、演奏のプロに依頼したという経験をすることができ、今でも歌ものの制作頻度は高くないけれども、作れと言われれば戸惑うことはなくなりました。人間、何ごとも経験です。

ほかにも民族音楽やバロックなクラシック音楽を依頼されたり、一時期は来る仕事来る仕事全部が未経験のジャンルつづきでしんどかったりしましたが、やったぶん、今の自分の糧になってるのはまちがいないです。

こんな感じでサウンドクリエイターとして活動していて、さまざまなジャンルを作れる器用さを求められるのは、恐らく自分だけではなく、みんな似た経験をしており、そしてそれを乗り越えて成長していってるのだと思います。

 

さて、いかがだったでしょう? 今回の作曲の話をする上で、どこを焦点にあてて話をしようかかなり迷ったんだけど、冒頭に話したように、各クリエイターによって考え方や制作スタイルはさまざまです。これが正解ということではなく、あくまで一個人の経験から学んだ考え方の一例を取り上げたに過ぎません。でも、面白く読んでもらえたなら幸いです!

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著者プロフィール

佐藤 豪
佐藤 豪サウンドクリエイター
ゲームサウンドクリエイター。気が付いたら24年この仕事やってます。作曲はもちろん、効果音が好きで効果音の研究に取り組んでいます。代表曲は『雷電II』『バイパーフェイズ1』『チョコットランド』など。

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